1年に1回フィラリア予防の前に血液検査を行います。フィラリアの検査の意味と必要性について理解したうえで検査を受けてみましょう。

フィラリア検査って何をする?

フィラリアの検査では、わんちゃんの血液を採取してフィラリアの有無をチェックします。

フィラリア抗原検査とは

当院で行うのはフィラリア抗原検査です。フィラリア抗原検査とは、血液中にフィラリアの虫の成分がないかを調べる検査です。

フィラリアの成分(抗原)は目に見えるものではありません。フィラリアの体に特有の成分を検出するためのキットが必要になります。このキットに犬の血液を一滴たらすことで、フィラリアが感染してしまっている場合にはその成分にキットが反応するためフィラリアの感染の有無がわかります。

左の図のように、フィラリアの成分が存在すると赤い線が出てフィラリア感染がわかるというものです(Cの線はコントロール線と言って検査がしっかり終わったことを示すものです)。

簡易検査は安くできるが・・・

フィラリアの検査には抗原検査以外に「ミクロフィラリア検査」という簡易検査もあります。ミクロフィラリアとは、フィラリアの子供であり、フィラリアが感染することで産まれた子供がいるかどうかを調べる検査です。血を一滴スライドグラスに落として顕微鏡で見るだけですので、検査キットが必要なく安価に検査ができます。

ただし、フィラリアに感染していてもミクロフィラリア検査で検出できないことが少なくなく、それを「オカルト感染」と呼びます。オカルト感染が起きる理由として

  • フィラリアのオスもしくはメスのみの単性感染
  • 感染してまだ日が浅い場合
  • 時間帯によってはミクロフィラリアが末梢血液中に少なくなる(日内変動)
  • すでにフィラリア予防薬を飲ませている(フィラリア予防薬によるミクロフィラリアの死滅)

などが考えられます。オカルト感染はフィラリア抗原検査でないとわかりません。フィラリア感染を見逃してしまう可能性もあるため、当院では抗原検査でしっかり確認するようにしています。

フィラリア検査をしないとどうなる?

では、フィラリア検査をしないでお薬を飲ませた場合にどうなるのでしょうか?

フィラリア予防をしっかりやっていれば大丈夫?

そもそもフィラリア予防をしっかりやっているなら感染しないのではないかと思われる方も多いと思います。そのあたりについて考えておきましょう。

確実に薬が飲めていれば感染することはまずないが・・・

まず、最初にお話ししたいのは、「確実に予防期間の間薬が飲めていれば」フィラリアに感染してしまうことはまずありません。フィラリア予防薬は非常に信頼性の高い薬であり、薬を飲んでいたのに感染してしまうということはまず考えられません。

  • 飲ませ忘れは大丈夫??

フィラリア予防の一番多い失敗は飲ませ忘れです。例えば1か月分飲ませるのを忘れていて投与感覚が2か月になってしまった場合には、運が悪いと投薬時にはすでにフィラリア成虫が感染してしまっている可能性があります。また、11月末~12月頭に最後の投薬が必要になりますが、そこで飲ませるのを忘れてしまうと、まだフィラリアに感染する可能性のある11月上旬に犬の体内に入ってきてしまったフィラリアの幼虫はそのまま成虫になってしまいます。

飲ませ忘れによって感染してしまうことは非常に多いため、それが大丈夫かどうかを調べるために検査を行います。

  • 吐き出していない?

犬は人に比べると吐きやすい動物で、飼い主さんの知らないところで吐いてしまうことも多いです。フィラリア予防薬を投与してから数時間以内におう吐をしてしまうと、薬の成分が吸収できていない可能性があります。しっかり飲ませていてもおう吐をしてしまうと予防薬の効果がなく、感染してしまう可能性もあります。

フィラリア感染犬にフィラリア予防薬を飲ませると・・・

フィラリアに感染してしまっている犬にフィラリア予防薬を飲ませるとどうなるのでしょうか?

  • 危険なショック症状

フィラリア感染犬にフィラリア予防薬を飲ませたときに一番怖いのが、アレルギーによるショックです。

フィラリア予防薬はフィラリアの幼虫を殺す薬ですが、ミクロフィラリアも一緒に殺してしまいます。蚊に刺されて体内に入るフィラリアの幼虫はそれほど多くはありませんが、ミクロフィラリアは血液1滴(0.03~0.05ml)の中に数匹存在するため、犬の体内には数十~数百万匹以上生息していると思われます。

フィラリア予防薬を飲むことで、それだけ多くのミクロフィラリアが死んでしまうと、ミクロフィラリアの中に含まれる成分が一気に血液中に放出されます。その成分に体が反応すると、アレルギー反応によるショック状態を起こすことがあります。これは亡くなってしまうことも少なくない、非常に危険な副作用です。

その他にも、元気や食欲の低下、嘔吐、下痢、皮膚の痒みや顔の腫れなどの副作用が出ることも多く、フィラリア感染犬にはフィラリア予防薬が毒になってしまうことがあります。

  • フィラリア感染犬にはショック予防のお薬とマイルドなフィラリア予防薬を

フィラリア感染犬には通常のフィラリア予防薬を飲ませることは危険です。ただし、だからと言って予防をしないとさらにたくさんのフィラリアが感染してしまい、心臓への負担が大きくなってしまいます。

そこで、フィラリア感染犬には、少しマイルドに効いてくれるフィラリア予防薬を、ショックの予防薬と一緒に飲ませます。そうすることでアレルギー反応を抑えつつ、フィラリア予防薬を飲ませることができるのです。

フィラリア検査をしないと薬を処方できない

今までのお話で、フィラリアの検査の意味と必要性が大体お分かりになっていただけたかと思います。さらに、もう一つ検査をする理由には薬を処方する際のルールがあります。

薬には必ず添付文書が付いています。添付文書とは、薬の効能や使い方、使う際の注意事項や保存方法など、製薬会社による指示が書いた紙です。フィラリア予防薬にも以下のようにそれぞれ添付文書があります。

アンダーラインの部位を読むと、フィラリア薬の投与前に検査をするように指示があります。薬を使う場合には添付文書の指示を守らないといけないため、もし検査をしないで処方することはできないのです。もし、検査をしないで飲ませて何か異常があった場合には、処方した獣医師の責任です。最近ではインターネットでフィラリア予防薬を購入することもできるようですが、その場合には体調を崩してしまっても責任はすべて飼い主さんが負うことになってしまいます。

検査には必ず意味がある

動物病院の検査には必ず意味があります。「検査ばかりでお金がかかるのが嫌」というお気持ちもわかりますし、不要な検査は極力行わないようにさせていただいています。フィラリアの検査に関しては、しっかり薬を飲んでいる場合にはまず感染することはないとは言えども、万が一感染していると重大な副作用を起こすことがあることと、処方の際のルールとして検査は必要になります。

フィラリアの検査や薬の処方など、ささいなことでも気になることがあれば聞いてくださいね。アイビーペットクリニックでは、飼い主さんの気になることが遠慮なく聞ける雰囲気作りを大切にしていきたいと考えております。ホームページでも病気や検査の情報を極力更新していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。