3か月のチワックスのホウ酸団子盗食

久々にお昼に救急の電話。「お家の犬がホウ酸団子を食べてしまった」―――もし愛犬だったら、どうしたらいいかわかりますか?

3か月の子犬がホウ酸団子を盗み食い

今回の患者さんは3か月のチワックス、ケイタ君(仮名)。30分ほど前にゴキブリ団子(ホウ酸団子)を食べてしまったということです。飼い主さんも忘れていたような数年前に置いておいたホウ酸団子だったとのこと。大量に食べたようではないですが、3カ月でまだ体も小さいため、緊急で来院してもらいました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ホウ酸団子を食べるとホウ酸中毒と玉ねぎ中度の可能性

ホウ酸団子には、犬にとって毒性のある成分が二つ入っています。玉ねぎとホウ酸です。

玉ねぎ中毒とは

比較的有名な話ですが、犬にとって玉ねぎは危険な食べ物です。少量だけであればまず問題はありませんが、大量に食べると強い貧血を起こすことがあります。今回食べてしまったホウ酸団子にどの程度玉ねぎ成分が入っているかわかりませんが、幸い、ケイタ君の食べたホウ酸団子の量は少なく、玉ねぎ中毒を起こすような量ではなさそうです。

ホウ酸中毒とは

ホウ酸は犬にも人にも危険なものです。日本中毒センターのウェブサイトによると、認知症の老人がホウ酸団子を大量に食べて亡くなってしまった例もあるということです。わんちゃんだけでなく、赤ちゃんや子供、認知症の老人などにも注意が必要です。

日本中毒センター

犬の中毒量は?

ホウ酸の中毒量、さまざまな説がありますが、しっかりした情報が少なく、色々調べてみると以下のようなデータが見つかりました。

イヌ-経口 中毒:0.33~0.5g/kg
イヌ-経口 MLD:1,780mg/kg ※MLD=最小致死量

http://www.maruishi-pharm.co.jp/med2/common/images/care/pdf/19.pdf

ケイタ君は体重1.7㎏なのでホウ酸0.6gで中毒、3gで亡くなってしまう可能性があるということになります。さらにまだ3カ月齢であり、内臓の機能がしっかりしていないことを考えると、それより少ない量で中毒を起こしたり、致命的になる可能性も否定できません。

ホウ酸含有量はどれくらい?

市販のホウ酸団子はパッケージがあればホウ酸がどれくらい含まれているのかがわかります。ただし、ケイタ君が食べてしまったものは数年前のホウ酸団子であり、すでにパッケージはありません。ネットで調べてみると、市販のホウ酸団子のホウ酸含有量は5~70%と非常に幅広いです。

もし70%含まれていた場合には、ホウ酸団子0.8gで中毒、4gで死亡の可能性があります。1円玉が1gであることを考えると非常に少ない量でも中毒や命に関わることがわかります。

ホウ酸中毒の症状は?

ホウ酸はさまざまな臓器に毒性があり、症状もいろいろ出るようです。

最も多いのが消化器症状であり、下痢や嘔吐、腹痛などです。そのほか、神経症状(震え、反射亢進、けいれん)、血圧低下、皮膚の発赤などもあると言われています。ホウ酸中毒では、食べて数時間意向でこれらの症状が出る可能性があります。

最悪の事態を考えて催吐処置を

ケイタ君の場合も、食べた量は不明(多くはない)で、玉ねぎ中毒と違い少量でも危険であることがあるため、最悪の事態を避けるために催吐処置を行いました。

食べて2~3時間以内なら催吐が効果的

中毒となるようなものを食べてしまった場合、それを吸収する前に吐かせてしまうのが最も効果的であり、吐ければ中毒のリスクは非常に少なくなります。3時間以上たってしまうとすでに吸収している割合が多くなってしまうため、催吐の効果は落ちてしまいます。

動物病院では90%以上吐かせられる

催吐処置は動物病院で行ってもらうことが大切です。以前読んだデータでは、催吐処置による催吐成功率は犬では95%以上。ただし、猫ではかなり割合は落ちてしまいます。また、私の経験では、子犬や興奮している犬では催吐が難しいケースが多いです。

家でもオキシドールなどを使った催吐を行うことができますが、オキシドールは胃を非常に荒してしまい、しばらく胃腸炎が続いてしまいます。また、気管に入れてしまって肺炎を起こすリスクもあるためおすすめしません。食塩を飲ませるのは催吐の成功率が低く、食塩中毒のリスクが大きいため、絶対にオススメしません。

ケイタ君、催吐成功!

ケイタ君は3か月の子犬であり、吐けるかどうか微妙な所でしたが、注射で見事に吐いてくれました。以下の写真は吐いたものですが、気分を害される方もいますので、モザイク処理をしておきます。

ホウ酸団子を食べた後、水分をたくさん取らせるためにお家でふやかしフードをあげていただいていたようでそのフードを大量に吐きました。ホウ酸団子の色はフードと同じであり、どれくらい吐けたのか不明ですが、胃の中のものは大部分吐いたようですので一安心です。

念のため点滴と活性炭を

中毒物質を食べてしまった場合によく行うのが点滴と活性炭です。

点滴は、食べてしまった中毒物質の血中濃度を下げるために行います。よほどのことがない限り、皮下点滴で行うため、それほど時間はかかりません。

また活性炭には、腸の中で中毒物質を吸着して体に吸収するのを防ぐ働きがあります。ホウ酸にも活性炭の投与が推奨されていますので、ケイタ君には病院で活性炭を飲まし、夜のフードにもまぜてもらうようにしました。

今のところは元気

そのまま帰宅してもらったケイタ君のお家に診察後にお電話させていただいたところ、元気でご飯も食べ、活性炭もしっかり飲めたようです。まだ今後中毒症状が出てくる可能性もありますが、とりあえず安心してもいいかなと思っております。まだ飼い主さんにはしっかり様子を見ておいてもらうよう伝えました。

中毒・消化管異物を防ごう

最近、変なものを食べてしまったという相談が多くなっております。本日も、ホウ酸団子の盗食以外にゴムのおもちゃを先週食べてしまったという犬の相談がありました。

中毒や消化管異物を防ぐには

  • 犬の届く範囲には食べてしまいそうなものを置かない(特に子犬では注意)
  • 食べてしまったらまずは動物病院に電話
  • 動物病院につながらない場合には、中毒性のものであればできるだけ水を飲ませる

ということが大切です。変なものを食べてしまっても催吐で吐かせられれば心配はかなり減ります。特に子犬を飼っている家庭や、これから子犬を飼う人は気を付けてくださいね!何かあれば先ずは動物病院に相談ください。

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です