外耳炎~適切な耳掃除とは

動物病院で診察をしていると、最も多い来院理由が外耳炎です。犬にも猫にも外耳炎は多いのですが、特に犬に外耳炎は多いです。今回は、先日来院した猫ちゃんの外耳炎のお話です。

外耳炎が治らない

まだ1歳のスコティッシュのジンちゃん(仮名)。外耳炎が治らないという主訴で来院されました。点耳薬をさしているとましだが、辞めるとすぐに痒みが出て耳垢がひどくなるということでした。

実際に診察をしてみると、確かに耳垢が多く、耳鏡(耳の中を覗く機械)で耳の奥を見てみると、黒い耳垢と耳道の強い発赤が確認されました。前の病院でも検査をしてもらっているということでしたが、まずは悪い菌や寄生虫がいないかどうかを顕微鏡で確認します。

検査のためにとった耳垢

スライドグラスに載せた耳垢

 

 

 

 

 

 

 

耳垢にはマラセチア菌

取った耳垢を顕微鏡で見てみると、マラセチアという酵母菌(真菌=カビの一種)が見つかりました。マラセチアも耳にかゆみや赤みを起こしたり、黒い耳垢がたくさん出ることがあります。他に耳に強い痒みを起こす耳ダニなどは見つかりませんでした。

さて、ここで問題になるのがマラセチアが本当に悪いのかという点です。

マラセチアは耳の中の常在菌

耳ダニは健康な外耳道には存在しない寄生虫です。つまり、耳ダニの存在=異常であり、耳ダニの治療が必要になります。一方、マラセチアは健康な外耳道にも少量は存在する常在菌です。マラセチアが増えている場合には、マラセチアのせいで外耳炎を起こしている可能性もありますが、耳道内の抵抗力が落ちてしまったせいでマラセチアが増えてしまったという可能性もあります。

マラセチアが増える原因

マラセチアが増えてしまうのにはいくつかの原因があります。

  • 耳道に脂成分(皮脂腺の分泌物など)が増える
  • 高温多湿な耳道の環境
  • 免疫力の低下(全身および局所)など

これらの要因を特定するのは難しいケースもありますが、長期に治療していても治らない場合には、耳道の環境が悪化してしまっている可能性があります。

耳道洗浄が外耳炎を悪化させるケースも

外耳炎の治療は耳掃除(耳道洗浄)や点耳薬が基本になりますが、場合によっては耳道洗浄によって外耳炎が複雑化することもあります。

耳道にも皮脂腺が存在しますが、皮脂腺の役割は皮脂を分泌して耳道を守ることにあります。耳掃除で必要な脂まで取ってしまうと、外耳道が傷つきやすくなったり、皮脂腺の分泌が異常に活発になって、かえって耳垢が増えてしまうこともあります。耳垢が多い場合には、耳の掃除が基本にはなりますが、耳掃除によって炎症や耳の環境が悪化する可能性もあります。

今回のジンちゃんの場合には、耳道の荒れが強く、耳掃除の治療を長期間行っていたということなので、一回耳の洗浄をやめてみることにしました。また、使っていた点耳薬は不明でしたが、お話からおそらく三剤合剤(抗菌薬・抗真菌薬・ステロイド剤の合剤)の可能性が高く、そちらも長期になっていることから耐性菌の発生なども考慮して酵素による抗菌を目的とした点耳薬(Zymox)を使ってみることにしました。

2週間後の再診

本日、2週間後の再診に来てくれたジンちゃん。飼い主さんはしっかり点耳薬をさすことができていたということです。お話を聞くと、耳を振るのはましになったとのことでした。耳鏡でのぞくと、黒い耳垢はまだでているものの、耳道の赤みはほぼなくなり、炎症が落ち着いている様子です。ジンちゃんもご機嫌に診察台の上で頭をすりすりしてくれます(これは前回もでしたが・・・(笑))。

炎症はかなり収まりましたが、まだ耳垢が多めなのでまた2週間洗浄なしで同じお薬を使ってもらうことにしました。とりあえず、今のところは洗浄をやめて、点耳薬を変えた効果はありそうです。

外耳炎は早めの対処を

外耳炎は犬にも猫にも非常に一般的な病気であり、お家の犬や猫が外耳炎にかかってしまうことはとても多いです。外耳炎はそれ自体で命にかかわることはまずありませんが、慢性化してしまうと非常に治りが悪くなってしまいます。外耳炎の症状は、耳を振る、耳を掻く、耳垂れが出る、耳がくさいなどですので、そういったことがある場合には、早めに動物病院に相談してください。また、外耳炎の治療には実はいろいろな方法があり、状態によってどのような治療法が合うのかが違ってきます。痒みはペットに非常に大きなストレスになりますので、たかが外耳炎と思わず、治りが悪い場合にはセカンドオピニオンを受けてみるのも一つかもしれませんね。

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