角膜潰瘍~シャンプーにご注意を(3月30日更新)

本日の診療報告は角膜潰瘍(かくまくかいよう)=目の表面の傷です。犬や猫に非常に多い病気で、ほとんどは傷や刺激物などの外的な要因によって起こります。今回は3か月の柴犬、アレックス君(仮名)のお話です。

アレックス君の目がしょぼしょぼ

アレックス君はやんちゃ盛りの3か月の柴犬さんです。今月の初旬にワクチンを打ち、来月頭に1年目最後のワクチン予定でした。受付に来られたので、「早いけれどワクチンかな」と思いお呼びしたところ、ワクチンではなく目と皮膚に付いてのご相談でした。

主訴は、「今日になって目がしょぼしょぼしている。ふけも多い。耳も異常に掻いている」とのこと。実際に診察していくことになりました。

身体検査:目の羞明と充血

まず、身体検査をしてみると、確かに右目がしょぼしょぼしています。目のしょぼつきは医学用語で「羞明(しゅうめい)」と呼びます。眼をしょぼしょぼさせてまぶしそうにする動作をしているときに使う症状名です。羞明の症状は、目の痛みや違和感がある時に出るケースが多いです。

また、右目の白目が左目に比べて赤く、充血しています。充血は目の炎症のサインとなります。興奮や緊張でも充血することはありますが、その場合は左右ともに充血しますので、片目だけ充血している場合には異常だと考えてもらっていいでしょう。

この段階で、何か目に傷や炎症がある可能性が高いと考え、飼い主さんに何か心当たりがないかどうか聞いてみました。すると、「昨日シャンプーをした」ということがわかりました。ただし、その時にキャンと鳴いたり痛がった様子はなかったとのことです。

目の傷をチェックするフローレス試験紙

では、目の異常を探るために検査を行います。まず一番可能性の高い目の傷のチェックです。

目の構造のおさらい

その前に少し目の構造をおさらいしておきましょう。目の表面には角膜(かくまく)という透明の膜があります。角膜は光を通すための透明な膜であり、眼球を外界の異物から守るという役割も持っています。

犬の目の構造。左側に見える透明な膜が角膜です。

角膜は透明で非常に繊細な膜であり、目の前面を覆っているため、傷やダメージを受けやすい組織になります。

フローレス試験とは

フローレス試験は、目の中に入れることのできる蛍光色素を含んだ試験紙を使った検査です。この試験紙を角膜に付けることで、傷がある場合にはそこに色素が溜まって黄色く見えてくるというテストです。角膜の傷である角膜潰瘍(かくまくかいよう)を疑う場合には必ず行う検査になります。

アレックスちゃんの結果は

アレックスちゃんにフローレス検査を行ってみると・・・

角膜潰瘍。眼球表面上方が薄く白く染まっています。周囲を暗くすると黄色に染まって見えます。

アレックスちゃんの角膜には少し大きめの角膜潰瘍が見つかりました。深くはないですが、大きいので少し注意は必要です。

シャンプーと角膜潰瘍の関係

犬の角膜潰瘍で最も多い原因が外傷、けんかやアクシデントなどで角膜に傷がついてしまうパターンです。そしてその次に多いのが、シャンプーによる角膜潰瘍です。シャンプーのような化学物質が目の中に入ると、角膜にダメージを与えて広範囲の角膜潰瘍を引き起こすことが多いです。入った時には痛みをあまり感じないことも多いようですが、数時間後~翌日にかけて角膜潰瘍の症状が出て来ることが多いです。

一方、外傷性の角膜潰瘍の場合には、何か外傷があってすぐに目をしょぼつかせたり目を痛がる症状が出て来ることが多いです。潰瘍も深い点や線状の潰瘍になることが多いです。

角膜潰瘍の治療は点眼+α

角膜潰瘍の治療は点眼薬がメインになります。抗生剤や角膜保護剤、炎症を抑える点眼薬などを組み合わせることが多くなります。潰瘍がひどい場合は内服薬も併用した方がいいこともあります。今回のアレックスちゃんの場合は、潰瘍がそれほど深くはなかったので点眼薬を2種類処方しました。

また、最初の稟告で「耳をよく掻いている」というものがありましたが、実はこれは目が痛痒くて目をかいている動作を飼い主さんが勘違いしたようでした。実際に院内でも顔を洗うように目を掻く動作が見られたため、エリザベスカラーを処方して目をかかないようにしました。眼をかいてしまうと、潰瘍が余計に悪化してしまいます。

シャンプーには注意しよう

今回のアレックスちゃんは、シャンプーによる角膜潰瘍の可能性が高いと思われます。幸い、潰瘍がそれほど強くなく、症状が出てすぐに当院へ連れて来ていただいたので、このまま治ってくれる可能性が高いと考えております。ひどい場合や放置した場合には、角膜に穴が開いてしまったり、最悪失明の恐れがありますのでそのまま置いておくのはかなり危険です。

動物病院でシャンプーをする場合でもシャンプーによる角膜潰瘍には非常に気を使います。少しでも目に飛んでしまうと角膜潰瘍を起こす可能性があるため、エリザベスカラーで頭部にシャンプーが飛ばないようにしたり、予防的に眼軟膏を塗ってシャンプーから眼を守ることともあります。

必要があれば眼軟膏をお出しすることはできますので、わんちゃん猫ちゃんのシャンプーをするときは、角膜潰瘍に注意をするようにしましょう。もしシャンプー後に気になることがあれば、アレックスちゃんのように早めに動物病院を受診するようにしてくださいね!

 

~続報(3月30日)~

アレックスちゃんが本日元気に来院しました。

先日の来院の次の日から眼を掻く頻度も減り、調子は良さそうということです。眼のしょぼしょぼもなくなり、症状は問題ナシ。悪化していることはなさそうですが、念のためフルオレセイン試験を行いました。

前回に比べると、かなり薄くなり、潰瘍の範囲も小さくなっていますが、まだ少し潰瘍が残っているようです。念のため1種類だけ目薬をもう少し続けてもらうようにしました。眼をこする動作もなくなったので、カラーは不要になっています。

アレックスちゃんはこのまま完治できそうでよかったです。今回のポイントは、早期に診断治療ができたことと、しっかりエリザベスカラーをしてもらったことだと思います。今後多少シャンプーが入ってしまっても大丈夫なように、眼軟膏をお渡しし、シャンプーの前に付けてもらうことにしました。アレックスちゃんの家族は、色々しっかりしていただけていますので一安心です。みなさんも、わんちゃん猫ちゃんのシャンプーには注意して下さいね!

~追加情報(4月24日)~

文献を調べていたところ、シャンプーも角膜潰瘍のリスクを高めますが、ドライヤーによる目の表面の乾燥も危険という報告が見つかりました。

わんちゃんを乾かすのはなかなか大変ですが、顔回りに高温や強風のドライヤーを当てるときには、注意が必要です。できるだけ休憩しながらやったり、顔回りはタオルドライをメインにしつつ、乾燥しないよう目薬や眼軟膏を付けておいた方が安心です。当院の患者さんであれば眼軟膏もお出しできますので、ご相談くださいね。

 

 

 

 

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