妊娠子宮摘出術

本日は妊娠子宮の摘出術がありました。望まない妊娠をしてしまう猫ちゃんは多いので、今回は猫ちゃんの妊娠と妊娠子宮摘出術に関してお話をします。

お家でお世話をする4頭のメス猫ちゃん

今回連れてきていただいたのは山県市の飼い主様。当院HPを見て、遠いところ連れてきていただきました。理由は避妊手術をしてほしいというもの。実はこちらの飼い主さん、お家に来ていた猫ちゃんが産んだ4頭のメス猫ちゃんを飼われています。おそらく生後8か月くらいとのことですが、そのうち2頭はすでにかなりお腹が大きくなっており、出産間際だということです。今回は、まだお腹が大きくない2頭をまずは避妊手術したいということで来院いただきました。

手術前の診察を

避妊手術の予約を受けるためには、事前に診察をさせていただいております。避妊手術は非常に多い手術とはいえ、全身麻酔をかけて開腹して行う手術です。どれだけ性能の良いモニターや安全性の高い麻酔薬を使っても絶対に安全ということは言えません。事前に身体検査などをして猫ちゃんの状態を把握すること、飼い主様に直接お話をして同意をいただくことが必要で、それをしてからでないと手術を引き受ける訳にはいきません。

今回も、診察をして手術の日程を決めようかと考えていました。

連れてきた子も妊娠・・・

簡単にお話をお伺いし、身体検査。「ん?」・・・お腹が張っている・・・お腹の中に丸いものが触れるような・・・そうです、お腹がまだ大きくなっていないと思って連れてこられた猫ちゃん、実は妊娠していたのです。超音波検査をしてみると、以下のような画像が確認できました。

妊娠子宮。黒い部分が羊水で、その中の白く見えるのが胎子。約3㎝。妊娠45日前後と考えられる。

まだ出産間際という感じではありませんが、すでにある程度子猫の形ができてしまっています。

出産か堕胎か

この時点での選択肢はそのまま出産させるか堕胎するかの二択になります。ただし、すでに他の2頭が妊娠しており、その子たちを合わせると子猫ちゃんがとても多くなってしまいます。飼い主さんもそれ以上の子猫は希望されなかったため、堕胎(妊娠子宮摘出)を行うことにしました。

猫の堕胎は妊娠子宮摘出

猫では堕胎をするときに子宮を残すメリットはほとんどなく、ヒトのような堕胎術も確立していないため、堕胎をする場合には妊娠子宮を取り出します。子宮を取れば妊娠することはありませんが、卵巣が残っていると発情が来てしまったり、乳腺腫瘍のリスクが高くなってしまうため、基本的には卵巣も一緒に取り出す卵巣子宮全摘出術を行います。

手術をするなら早めにすべき

手術をすると決めたのであれば、できるだけ早めに行う必要があります。胎児が大きくなればなるほど母猫ちゃんの体力は消耗しますし、手術時の負担も大きくなってしまいます。少しでもリスクや負担を減らすためには、できるだけ早い手術がおすすめです。

妊娠子宮摘出術

今回は連れてきていただいた2頭のうち、1頭はある程度お腹が大きく、もう1頭の子も妊娠を疑うような軽度の腹囲膨満がありました。そこで、飼い主さんと相談の上、できるだけ早い手術となり、昨日そのまま猫ちゃんをお預かりして本日手術を行いました。

術式は大きく変わらない

妊娠子宮摘出術は、通常の避妊手術と大きく手技は変わりません。当院では健康な猫の避妊手術は卵巣摘出術のみ、犬の避妊手術は卵巣子宮摘出術を実施していますので、猫の妊娠子宮摘出術は、犬の避妊手術と同じような手順で行います。

全身麻酔をかけ、心電図や酸素濃度などのモニターを装着後、術部の毛刈りと消毒を行い手術を開始します。腹部の正中を切開し、妊娠した子宮を確認し、卵巣や子宮に入り込む血管を結紮したのち切断して卵巣と子宮ごと胎児を取り出します。出血がないことを確認し、腹壁・皮下組織・皮膚の順に縫合し、術後服を着せて、麻酔を覚まし手術終了です。本日も特に問題なく手術が終わりほっと一息です。

以下の写真は摘出した妊娠子宮と卵巣です。

子宮と卵巣ごと摘出した猫の胎子。クリックするとモザイク無しの画像をご覧いただけます。

見たくない方もいるかと思いますので、モザイク処理をさせていただいていますが、しっかり見たい方は写真をクリックしてください。モザイク処理のない写真をご覧いただけます。

妊娠子宮摘出術のリスク

妊娠していない子の避妊手術に比べ、妊娠子宮摘出術ではいくつかのリスクがあります。

母体の体力低下

妊娠している場合、胎児を育てるために母親の栄養状態が悪くなることがあります。また、妊娠子宮への血流が多くなる分、貧血気味になる猫も多いです。妊娠していない猫に比べると体力が落ちて麻酔のリスクが増加します。

大出血のリスク

妊娠していない猫では、卵巣や子宮に入り込む血管は非常に細く、万が一出血したとしてもそれほど大きな出血にならないケースが多いです。一方、妊娠時の子宮や卵巣の血管は通常時の数倍の太さになります。万が一それらの血管から出血してしまうと大出血になってしまう可能性もあります。

血圧変動のリスク

特に妊娠後期になると、猫のお腹の中は胎児を入れた子宮でいっぱいになります。手術で子宮を取り出すと、その分の腹圧が下がり、心臓に戻る血液が減るため急激に血圧が下がることがあります。

妊娠を望まないなら早めの手術を

すでに妊娠してしまっている場合には仕方のないこともありますが、妊娠子宮摘出術は倫理面とリスクの面で望ましい手術ではありません。それを回避するためには妊娠する前に避妊手術をすることが一番です。また、万が一妊娠してしまっている可能性がある場合でも、できるだけ早く手術することで、手術のリスクを最小限にすることもできます。

今回連れてきていただいた飼い主さんはご理解のある方でしたので、明日ももう1頭の手術(妊娠しているかどうかは不明)を行うことにしております。

2月~5月くらいまでの間は猫の発情期で、発情・交尾・妊娠・出産が盛んになる時期です。増えすぎて不幸になってしまう猫を減らすためだけでなく、避妊手術は健康面や寿命を延ばす意味でもメリットがある手術です。土日でも緊急的な手術ができるケースもありますので(予定によってはできないこともあります)、妊娠している可能性がある猫ちゃん、早めに手術をしたい猫ちゃんがいる場合には、お早めにご相談お願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です