歯周病と根尖膿瘍~急に口元が腫れて来た

6月はアイビーペットクリニック予防歯科強化月間です。そこで今回は5月に来院した2頭の歯科疾患のわんちゃんについてお話いたします。

歯周病からの発熱を起こした2症例

わんちゃん1:ミニチュアダックスフント 10歳

受診日当日から食欲がなく、元気も落ちているとのことで来院されました。口の左側をよく掻く動作も気になるとのことです。

診察でお熱を計ってみると39.7℃と発熱が認められました(犬の正常な体温は38~39℃)。身体検査をしてみると・・・よく掻くという左側の奥歯(第三前臼歯)にかなり歯石が付いており、その根元には強い歯周病が見つかりました。

念のため血液検査をしてみると、白血球が23,100個/μl(正常値 6,000~15,000)、CRP(急性相タンパク)が4.6mg/dL(正常値 1.0mg/dL以下)と炎症や感染の数値が高くなっています。そのほかの血液検査には大きな異常は認められません。

歯周病からの発熱と考え、点滴と抗生物質、消炎解熱剤の注射を行い、翌日来院してもらいました。翌日の再診では体温38.6℃に下がっており、調子も少しずつ改善しているということでした。再度注射をして、抗生物質の内服を出して経過観察としました。その後は調子が良く来院されていませんが、お電話で確認させていただいたところ現在は調子よく元気にしてくれているとのことです

 

わんちゃん2:ミニチュアダックスフント 11歳

 

朝には何ともなかったのに、飼い主さんが夜帰ってきたら口が腫れていることに気付き、緊急的に来院していただきました。

身体検査ではやはり発熱(39.9℃)し、顔が腫れていることがわかりました。こちらのわんちゃんは、口元(鼻の横)に5~10㎜程度の腫れが確認されています。口の中を覗いてみると、やはり第三前臼歯に大きな歯石が付いており、その周りに強い歯周病を起こしていました。

身体検査で他に大きな異常が見つからず、元気や食欲は落ちていないということでしたので、飼い主さんと相談の上それ以上検査をせず、抗生物質と消炎鎮痛剤の注射と内服薬を処方させていただきました。1週間後の再診ではお熱も口の腫れも落ち着いていました。ただし、歯周病はまだ残っていたため、抗生物質を追加で処方しました。飼い主さんの同意も得られたため、6月に入ってから歯石除去と抜歯の予約を入れております。

歯石と歯周病と根尖膿瘍

歯石とは

歯石とは、歯に付いた食べかすや細菌が固まってミネラルとともに石になったものです。単なる食べかすやミネラルの塊ではないため、歯石の周りの歯肉に炎症を起こしたり、膿が溜まったりしてしまいます。

歯周病とは

歯周病は歯の周りの歯肉の炎症です。特に、歯の根元の歯周ポケット(歯と歯茎の間の隙間)には炎症や膿がたまりやすく、重度の歯周病では歯の根元に膿が溜まってきます。

根尖膿瘍とは

犬の歯には、口の中で見えている部分よりも長い歯根があり、歯茎の中に深く埋もれています。その歯根の根元は根尖(こんせん)と呼ばれますが、この部分に膿が溜まる状態を根尖膿瘍(こんせんのうよう)と呼びます。特に犬では上顎前臼歯の根尖膿瘍が多く、その場合には口元(鼻の横)が腫れて来ることが多いです。さらに膿が多くなると、パンパンになり皮膚に穴が開く「外歯瘻(がいしろう)」の状態になります。

歯石と歯周病と根尖膿瘍の関係

歯石はばい菌の塊ですので、歯石の近くの歯肉に歯周病を引き起こします。歯周病がどんどん歯の根元に広がると根尖膿瘍へと進行してしまいます。歯石が付いているだけでは症状が出ることは少ないですが、歯周病や根尖膿瘍があると口の痛みや腫れ、発熱などの全身症状が出るケースがあります。

歯周病や根尖膿瘍の治療

投薬治療

歯周病や根尖膿瘍の治療は、一般的には薬で行っていくことが多いです。炎症を抑えるための消炎鎮痛薬、歯周病菌を抑えるための抗生物質などを注射したり内服したりして、歯周病や根尖膿瘍を抑えていきます。ただし、投薬治療では歯石や歯周病の根治治療ができないため、再発は多くなります。

歯石除去・抜歯

歯周病や根尖膿瘍を起こす根本的な原因を治療するためには、歯石除去(スケーリング)や悪い歯を抜歯してしまう必要があります。スケーリングや抜歯のためには全身麻酔が必要になりますが、麻酔のリスクの低い動物であれば、早めに根本的な治療をしてその後の再発や合併症を予防してあげるのが最善策です。

まとめ

犬には歯石が付きやすく、歯石から歯周病や根尖膿瘍を起こしてしまうわんちゃんも多いです。重度の歯周病は心内膜炎や僧帽弁閉鎖不全症など心臓病の発生率を4倍以上に高めてしまうという報告もあります。

たかが歯石や歯周病などと思わず、わんちゃんと長く幸せに生活できるよう、歯石の予防や治療などを頑張ってみませんか?歯磨きの仕方や歯石・口臭のご相談だけでも診察は可能ですので、お気軽にご相談くださいね。

 

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