犬の歯周病が心不全のリスクを高める

6月は予防歯科強化月間とさせていただいております。今日は、10万頭以上の犬のデータを基にした、歯周病が心不全のリスクを高めるという報告をご紹介させていただきます。

論文の内容

アメリカにあるパデュー大学のグリックマン博士の調査は以下の通りです。

調査内容

  • なんらかの歯周疾患を持つ犬約6万頭と、歯周疾患のない犬約6万頭を平均2.5年間調査
  • 歯周疾患の度合い(ステージ1~3:1は軽度、3は重度)によって、調査期間中に心臓病を引き起こした犬の割合を調べる

結果

うっ血性心不全を発症した割合

  • 歯周疾患のない犬:0.43%
  • ステージ1の歯周疾患を持つ犬:0.49%
  • ステージ2の歯周疾患を持つ犬:1.09%
  • ステージ3の歯周疾患を持つ犬:1.90%

⇒重度の歯周病がある犬ほど、うっ血性心不全(犬で最も一般的な心不全)のリスクが上がる(単純な比較をすると、中等度以上の歯周疾患があれば、心不全の発症リスクは2~4倍になる)

心内膜炎および心臓弁の感染を起こした割合

  • 歯周疾患のない犬:0.01%
  • ステージ3の歯周疾患を持つ犬:0.15%

⇒重度の歯周疾患があると、進行が非常に早く、重度の心不全を引き起こす心内膜炎や弁の感染症の発症リスクが高くなる

この論文の要点

歯石や歯周病などの歯周疾患は、犬の心不全の発症リスクとして非常に危険

歯周病がなぜ心臓病を引き起こす?

では、なぜ歯周病は心臓病を引き起こすのでしょうか?

歯周病はばい菌の巣窟

歯周病になった歯の根元には大量の歯周病菌が存在します。その場所にいるだけであれば、全身への影響はありませんが、歯茎の血管から血液中に菌やその毒素が入り込んでしまいます。そうすると、血流に菌や毒素が乗って全身へ運ばれてさまざまな害を及ぼします。

菌自体の問題

血流にのった歯周病菌は基本的には体の免疫細胞によって攻撃され、全身の感染症を引き起こすことは稀です。ただし、免疫細胞からの攻撃を待逃れた一部の菌が心臓の中で増殖すると、心内膜炎や心臓弁の感染を引き起こします。心内膜炎や心臓弁の感染は急性心不全の原因となるだけでなく、弁の変性などを引き起こし、慢性心不全の原因ともなります。

毒素の問題

歯周病菌が出す毒素が、歯茎の血管から血液中に入り込むと、血管内や心臓内で炎症を引き起こします。人では、歯周病菌が心臓の血管に炎症を引き起こし、心筋梗塞のリスクが2倍になるとも言われています。

犬では心筋梗塞の診断が難しく、いまだに犬の心筋梗塞の発症に関しては不明点が多いですが、心臓内の炎症により、MR(僧帽弁閉鎖不全症)などの弁膜疾患のリスクが高くなることが予想されます。

まとめ

歯石や歯周病などの歯周疾患は、口の中の問題だけでなく、全身の健康にも大きく影響されます。今回ご紹介した犬の心不全以外にも、糖尿病や猫の腎臓病などのリスクをあげるという報告があります。

口がくさいからというだけでなく、愛犬の健康を守るためにもお口の健康を守る予防歯科をしっかり行っていきましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です