子犬・子猫は低血糖に要注意

同じ犬や猫でも、その動物の年齢によって病気や症状の考え方は違ってきます。同じ症状でも、少し様子を見てもいい場合からすぐに動物病院へ連れてきた方がいい場合までさまざまです。今回は、先日来院した、子犬のヨーキーちゃんを例にお話しさせていただきます。

嘔吐と食欲不振の子犬ちゃん

今回ご紹介するのは、2か月のヨークシャテリア、アール君(仮名)です。午後の診察が終了してカルテをまとめていたところ、お電話をいただきました。

お電話の内容は「昨日お家に来た子犬が、食欲無く嘔吐をしている」といったものでした。

嘔吐や食欲不振に対する考え方

嘔吐や食欲不振という症状は犬や猫には比較的多く、日常よく見る症状の一つです。

健康な成犬・成猫の場合

原因にもよりますが、健康な成犬の場合、一度嘔吐しただけとか1日ご飯を食べないというくらいではそれほど緊急性が高くないことが多いです。もちろん、ぐったりしているとか息が荒いなどの他の症状があれば別ですが、少し嘔吐をしてご飯を食べないというだけで元気にしているようであれば、すぐに動物病院へ連れて行かないといけないということはなく、少し様子を見てもそれほど危険ではありません。

子犬・子猫の場合

一方、子犬や子猫の嘔吐や食欲不振は、様子を見ることはおすすめできません。

幼い動物と大人の動物の最も大きな違いはその予備能力にあります。人でも同じことが言えますが、大人の動物では、肝臓の代謝能力が高く、肝臓に貯蔵された予備のエネルギーがある程度ありますので、数日食べなくてもその予備能力でカバーすることができます。一方で、子犬や子猫には予備能力がほとんどありません。1日ご飯を食べないだけで、体を維持するためのエネルギーが不足してしまい、低血糖を起こしてしまうことは少なくありません。

アール君の症状は?

さて、話をアール君の状態に戻しましょう。

家に来てからご飯を食べない・・・

アール君は前日にお家にやってきました。その日はとっても元気に走り回っていたそうです。動画を見せていただきましたが楽しそうに走り回っています。ただ、ショップで食べていたご飯を、お家では全然食べてくれなかったとのことです。

そしてお家に着た翌日、嘔吐をして元気がだんだんなくなってきて当院へご連絡いただいたという流れです。

夜間に緊急診察を

先ほど書いた通り、子犬の食欲不振や嘔吐は大変危険です。また、子犬や子猫は起きている時間はとにかく落ち着きなく動き回るのが正常です。飼い主さんが見て元気がないというのは、明らかな異常であり、低血糖を起こしている可能性もあり時間外でしたが診察に来ていただきました。

診察台の上でも元気がない

夜9時ころ、アール君と飼い主さん家族が到着しました。まず目や足に力があることにほっとします。重度の低血糖を起こしていると、目がとろんとし、病院に来ても寝たままの状態です。

診察台の上に載ってもらい、体温と血圧をチェックします。体温は38℃台、股動脈の脈拍もしっかりしており、低体温や低血圧も起こしていないようです。この時点で一刻を争う緊急状態ではないと判断し、飼い主さんからお話を伺いながら詳しい身体検査を始めていきます。

そこで気付くのが診察台の上での元気のなさです。健康な子犬・子猫の場合、台から落ちないように見ておくのが大変なほど診察台の上でよく動きます。しかし、アール君は診察台の上でぼーっと立ったままで、しばらくすると伏せてしまいました。

診察台の上でのアール君。台の上で伏せをして大人しくするというのは、健康な子犬ちゃんでは通常みられない行動です。

アール君の治療

アール君はバイタルは安定しているものの、一般状態は良くなくそのまま置いておくと低血糖から低体温、低血圧を起こす可能性があります。

そこで、まずは栄養価の高いa/dというフードを与えてみることにしました。a/dを鼻先や歯茎に塗ると・・・すぐに出してしまいます。そこで次の手段として、a/dを注射器のポンプ(シリンジ)に詰めて口の中に入れる強制給餌を行いました。少しは食べてくれますが、やはり結構吐き出してしまいます。

こういった場合には低血糖気味になっている可能性があります。血糖値を調べれば低血糖かどうかはわかりますが、夜間診療で人手がいないこともあり、まずは血糖値をあげるためにブドウ糖を注射器のポンプで飲ませてみました。すると、ペロペロおいしそうに飲んでくれます。そうしているうちに少しずつ元気が出始め、診察台の上でも動きが活発になってきました。少し様子を見ていると、先ほど嫌がって出してしまったa/dを少し自分からペロっと食べる動作をし始めました!やはり、少し低血糖気味になっていて、体がだるかったため動きが悪くご飯も食べてくれなかったようです。

とりあえず一安心し、背中に点滴や吐き気止めなどの注射をして、翌日再診をしてもらうことにしました。

翌日の再診では元気に!

さて、翌日再診に来てもらうと、アール君とっても元気そうです。目にも元気さがみなぎり、診察台の上ではうろうろ歩き回るようになっていました。健康な子犬ちゃんによく見られる行動です。

お話を聞くと、昨日はほとんど食べなかったけれどブドウ糖は好きでペロペロ飲んでくれたとのこと。そして、翌日(再診日)から元気と食欲が出始め、病院に来る前にa/dをかなりたくさん食べてきてくれたようです。点滴は必要なさそうでしたので、注射をして、飲み薬を出して経過観察としました。

現在はケンネルコフ(いわゆる犬の風邪)と思われる咳で通院中ですが、元気も食欲もかなり戻って、お家では甘噛みなどのやんちゃをしているとのことです。

家に来て2週間はストレスによる体調変化に要注意

アール君のように、家に着てすぐに調子を崩す子犬・子猫は少なくありません。元気そうに見えても環境に適応するために子犬・子猫なりにかなり強いストレスを感じています。アール君もお家に来た初日はかなり元気に走り回っていたようですが、その小さな体の中では環境変化によるストレスを強く感じていたようです。

特にお家に来て2週間くらいは、環境の変化に順応するために必要になり、その間にストレスから調子を崩すこともあります。その時期はあまりストレスをかけないよう、無理に起こして遊ばせたり、知り合いの方をたくさん呼んで子犬が落ち着かないような状況を作らないようにしておくことも大切です。アール君の場合は、特別なストレスはなかったようですが、環境の変化に敏感にストレスを感じてしまったようです。

家に来てから1週間の過ごし方に関するページも作成していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。

http://ivy-pet.com/%EF%BC%95%EF%BC%8E%E5%AD%90%E7%8A%AC%E3%82%92%E8%BF%8E%E3%81%88%E3%81%A61%E9%80%B1%E9%96%93%E3%81%AE%E9%96%93%E3%81%AE%E9%81%8E%E3%81%94%E3%81%97%E6%96%B9/

子犬・子猫の食欲不振はすぐに来院を

今回、アール君はぐったりする前に連れてきていただいたため、入院などの処置の必要なく回復してくれました。子犬・子猫では大人の動物に比べて予備能力が非常に少ないため、1日ご飯を食べないだけでも低血糖など命の危険がある状態になってしまうこともあります。「昨日まで元気だったのに・・・」ということも非常に多く、毎日ペットの状態をしっかり観察していただくことが、子犬・子猫が元気で生活するために大切になります。

動物全般に言えることですが、子犬や子猫では特に重症になる前に早めの対処が重要になってきます。何か気になることがある場合には、まずは当院へご連絡くださいね。

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