お腹が弱い犬はチェックを!慢性膵炎と食餌療法

元気・食欲・呼吸・尿・便・舌の色・・・お家でペットの健康状態をチェックする方法はいろいろです。そんな中で便の状態は、比較的変化がわかりやすく、愛犬・愛猫の健康のバロメーターの一つとして、しっかり見ておいてほしい項目です。

今回は、お腹の調子の悪いチワワちゃんのお話です。もし愛犬・愛猫のお腹が弱いなと感じる方は是非ご覧くださいね。

犬や猫の正常な便・異常な便とは

飼い主さんに聞かれることの多いこととして「うちの子の便、正常なの?」という質問があります。実はなかなか難しい質問なんです。

犬や猫の健康な便

「犬や猫の正常な便ってどんなの?」と聞かれた場合には、「形がしっかりあって、つまんでも崩れず、下にもほぼつかない」とお答えしています。こういった便が出ている場合にはほとんど異常がないと言ってもいいでしょう。あまりに硬すぎて気張る時間が長いという場合には、便秘気味である可能性がありますが、特に猫では、健康でもかなりコロコロした固めの便をすることがあります。

異常な便とは?

では、飼い主さんによく聞かれる「これって大丈夫?」についてお話しします。

  1. 何度か便をして最後の方が軟便正常か異常か難しいところですが、健康な犬ではこういったことは良くあります。特に外で便をする犬の場合には、「できるときにしておきたい」という気持ちが働くのか、まだ水分が多めで完全に出来上がっていないような便を無理に出してしまうこともあるようで、その場合には最後の便が緩くなることもあります。最後の便が緩いという場合には、異常がないとは言えませんが、心配しなくてもいいケースが多いです。
  2. 下痢ではないが常に便が緩い下痢というほどではないけれど、つかむと崩れたり、床に便が付いてしまうような軟便をするという場合には、異常がある可能性があります。しっかり動物病院で検査をしてもらった方がいいでしょう。
    原因としては、消化管内寄生虫や消化不良(消化酵素の不足)、食物アレルギー、食物不耐性、慢性腸症などさまざまです。検便や酵素の検査、食餌の試験的投与などが必要になることがあります。
  3. 時々下痢をする普段はいい便だけど、時々下痢をするといい場合にも病気が潜んでいる可能性があります。年に数回というレベルであれば特に問題はないですが、月に数回下痢をするなどといった場合には、2と同じような病気や、ホルモンの病気が隠れている可能性もあります。

下痢や嘔吐を繰り返すチワワちゃん

今回ご紹介するのは、下痢やおう吐を繰り返した5歳のチワワ、アンちゃん(仮)です。

短期間に下痢・嘔吐を繰り返す

アンちゃんが最初に当院を受診したのがゴールデンウィークごろ。突然の嘔吐と下痢を主訴に来院しました。

身体検査では異常は見つかりませんでしたが、10回以上吐いているということもあり、念のため血液検査を実施。膵臓の数値(vリパーゼ)だけが異常な高値(正常値が10~160U/Lのところ、481U/L)を示し、膵炎が疑われます。ただし、炎症の数値(CRP)が正常値であったため、とりあえず皮下補液や抗生剤、消炎剤、下痢止め、吐き気止めなどの対症療法を行い、翌日近医を受診するよう伝えました。

一旦完治

アラーちゃんが次に来院したのは約10日後。また調子が悪いのかと思って聞いてみると、狂犬病ワクチン希望。実は初診後すぐに調子が良くなり、翌日にはいつも通りに元気にご飯を食べたので、かかりつけには行っていないとのことでした。つまり、一回の点滴と注射で症状は完全に収まってしまっていたようです。

調子が戻ってすでに1週間以上たっているということでしたので、体長に異常がないことを確認し、狂犬病のワクチンを打ってその日の診療は終了しました。

また調子が悪い

次にアンちゃんが来院したのはその約1週間後。また同じように嘔吐と下痢を主訴に来られました。一瞬、狂犬病による副作用も頭をよぎりましたが、接種後から調子を崩したわけでなく、調子を崩したのは来院日(接種後1週間)とのこと。さすがに副作用であれば遅すぎます。

前回高かったvリパーゼが気になり、再度検査をしてみると、やはり552IU/Lと高値になっています。今回もCRPは正常値であったため、前回と同じように対症療法を行い、経過観察としました。今回もその治療によりそのまま良くなりました。

慢性膵炎を疑い食餌療法を

ここで考えなければならないのが、調子を崩した2度とも膵臓の数値が異常に高かったこと。調子がいい時に血液検査をしていないので、一時的に上がっていたのか、慢性的に高いのかは不明ですが、調子を崩したときに膵臓に負担がかかっている(膵炎がある)ことは間違いなさそうです。

低脂肪食を試す

ということで、アンちゃんには低脂肪食(ロイヤルカナン「消化器サポート低脂肪」)を食べてもらうことにしました。膵臓から出る消化酵素は、主に脂肪を消化するためのものであり、高脂肪のフードを食べると膵臓が刺激されて消化酵素が分泌されます。

つまり、脂肪をたくさんとればとるほど膵臓への負担が増えていくことになります。そして、膵臓が頑張って働こうとすると、膵炎のリスクは高まってきます。アンちゃんには低脂肪食を食べてもらい、膵臓を休ませることにしました。

1か月後の血液検査

低脂肪食を食べ始めて1か月、その間は全く問題なく元気に生活していたというアンちゃん。食餌の効果を見るために血液検査をしました。すると、前回500IU/Lを越えていたリパーゼが、10分の1以下の46IU/Lまで下がっていました。

おそらく、通常のフードでは負担が強すぎたアンちゃんの膵臓を、低脂肪食によりだいぶ休めることができたようです。アンちゃんも消化器サポート低脂肪が好きなようで、そのまま食べ続けてもらうことにしました。

まとめ

元気や食欲があると、軟便や下痢などがあっても多少は大丈夫だろうと考えてしまいがちです。たしかに、そういった状態の場合には緊急性がある可能性は少なく、すぐに検査をしなければならないということはありません。

ただし、アンちゃんのように膵臓が弱い場合には、いつ急性膵炎を発症するかわからず、もし劇症型の急性膵炎を起こしてしまうと数日で亡くなってしまうこともある危険な状態です。愛犬が良くお腹を下すなどの症状がある場合には、慢性膵炎の可能性も含め、一度検査を受けることをおすすめいたします。

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