猫パルボウイルス感染症の症状・消毒法とワクチン接種

東京の猫カフェで、「猫パルボウイルス」が発生し、ニュースになっています。致死率が非常に高く、注意が必要な猫パルボウイルス。この病気はワクチンでほぼ100%予防することができる病気です。

完全室内外の猫でも、飼い主さんが持ってきてしまう可能性のあるウイルスなので、しっかりパルボウイルスの知識をつけ、おうちの子を守ってあげましょう。

猫パルボウイルスとは

猫パルボウイルスは、「猫白血球減少症」を引き起こすウイルスです。猫特有のウイルスで、ヒトや犬にうつることはないと言われています。犬には、「犬パルボウイルス」が存在し、こちらも子犬に危険性の高いウイルスです。

猫パルボウイルスの感染経路

猫パルボウイルスにかかった猫は、嘔吐や下痢をしますが、その嘔吐物や便にウイルスが混じっています。そのウイルスが食べ物に混じったり、猫が舐めてしまうことにより、新しい猫に感染します。

ウイルスは1年以上自然界で生存する

パルボウイルスが怖いのは、その致死率だけでなく「ウイルスの強さ」です。たとえば、ヒトのインフルエンザウイルスは、くしゃみなどで体外へ出ると、通常8~48時間しか生きられないと言われています。つまり、インフルエンザウイルスは消毒をしなくても2日すれば感染することはありません。HIVウイルスは体外へ出てすぐに失活すると言われており、エイズに感染した人が触ったものから感染することはありません。

しかし、パルボウイルスは、体の外に出ても1年以上生きのびられると言われています。つまり、適切な消毒をしないと、1年以上前に排泄されたウイルスが感染してしまうということも起こります。そのため、パルボウイルスが蔓延してしまった施設では、ウイルスを殺滅するために徹底的な消毒が必要になります。

直接接触だけでなく間接接触にも注意

パルボウイルスは、感染した猫の便や吐物に直接触れる以外にも、トイレや食器に付いたウイルスに触れる間接接触でも感染してしまいます。さらには、ヒトの手や衣服、靴などに付いたウイルスも長い間生存するため、人が外からパルボウイルスを家の中に持ってきてしまうこともあるのです。

猫パルボウイルスの症状

猫パルボウイルス感染症は、猫白血球減少症という名前が付いている通り、白血球の減少を引き起こします。白血球の減少が起こると、抵抗力が落ちるため、発熱や元気の消失という症状が現れます。

また、猫パルボウイルスは腸の粘膜で増殖するため、激しい嘔吐や下痢、血便などを引き起こします。そのため、飼い始めたばかりの子猫に、嘔吐や下痢、血便が出た場合には、パルボウイルスに要注意です。

パルボウイルスには、感染してから症状が出るまでの期間である「潜伏期」があります。潜伏期は2~14日と言われていますが、通常感染後1週間以内に発症します。家に来てから1週間以内の猫に食欲不振、嘔吐、下痢や血便などが現れるというのが、パルボウイルスの特徴的な症状となります。

猫パルボウイルスの治療

猫パルボウイルスの治療は、点滴や下痢止め、吐き気止めなどの対症療法以外に、ウイルスに対するインターフェロンの注射、二次感染を予防する抗生物質の注射などが中心になります。

パルボウイルスは院内感染のリスクが非常に高いウイルスですので、通常隔離室で入院させます。そのため、隔離室がない動物病院ではパルボウイルスに感染した動物は入院治療ができない場合もあります。

パルボウイルス感染症は、発症してから数日間が生死を分けると言っても過言ではありません。数日間生き残ることができると、体がパルボウイルスに対して抵抗力を獲得し、急速に回復します。猫が回復してきているかどうかは、その症状や体温と、白血球の数で判断します。白血球の数が増え始めると、ほとんどのケースで生き残ることができます。パルボウイルスは1度良くなってしまえば完治できる病気です。

しかし、抵抗力の弱い3カ月未満の子猫がパルボウイルスに感染すると致死率が80%を超えるという報告もあります。一方、成猫ではパルボウイルスに感染しても下痢や嘔吐などの症状を数日出して回復するケースが多く、致死率も低くなります。

猫パルボウイルスを予防するために

猫パルボウイルスの予防は、ワクチンと消毒が非常に大切です。

最も大切なワクチン接種

猫パルボウイルスを予防するために最も効果的なのは、ワクチン接種です。適切にワクチンを接種していると、パルボウイルスの感染は100%近く防ぐことができます。

子猫のワクチンはタイミングも重要

子猫のワクチンはそのタイミングも大切です。子猫には母乳に含まれる移行抗体と呼ばれる抵抗力が存在し、ワクチンの効果をブロックしてしまうことがあります。そのため、1回のワクチンのみで終わったり、あまり早くワクチンプログラムを終了してしまうと、ワクチンが不十分になってしまうこともあり、注意が必要です。

ワクチンは基本的には1年に1度

当院では、基本的には子猫には1カ月おきの2回、成猫には1年ごとのワクチン接種をすすめています。ただし、7歳を超える高齢猫の場合には、ワクチン抗体価検査をすることで数年に1回の予防接種にすることは可能ですので、気になる方はお気軽にご相談ください。

抗体価検査に関してはこちらの記事を参考にしてください。

ちなみに、当院ではパルボウイルスを含む3種のワクチンは税抜き4,500円(診察料込)で接種しております。

パルボウイルスの消毒には塩素系消毒薬

パルボウイルスは、消毒に対しても非常に抵抗力が強く、アルコールや石鹸などの通常の消毒薬ではなかなか死滅しません。パルボウイルスに効果があると言われているのがハイターなどの塩素系消毒薬です。もし、パルボウイルスの猫を触ってしまった場合には、手指や服を塩素系の消毒液で消毒する必要があります。

今のところ、当院にはパルボウイルス感染症の動物は来てはいませんが、パルボウイルスの動物が来る可能性も考えて、常に以下のような塩素系の消毒薬を使用しています。

家の猫がパルボウイルス感染?そんな時には

では、実際にパルボウイルスが出てしまった場合にどうしたらいいか考えてみましょう。

パルボウイルスに注意が必要な猫

以下のような猫では、パルボウイルスに要注意です。

  • ワクチンプログラムが終わっていない子猫
  • 家に来て1週間以内の猫
  • 子猫がたくさんいる家庭

また、以下のような場合にもパルボウイルス感染症にかかる可能性が高いです。

  • ワクチン未接種もしくはワクチンを1年以上打っていない成猫で
    ・多頭飼い猫
    ・野良猫との接触がある猫
    ・がんや糖尿病など持病を持っている猫

パルボウイルスを疑う症状

パルボウイルスは以下のような症状がある場合に疑うべきです。

ワクチン未接種・ワクチンプログラム終了前・ワクチンの間隔が1年以上空いている猫で

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 血便
  • 食欲低下
  • 元気消失
  • 発熱

などの症状がある。

パルボウイルスを疑う場合の動物病院の受診方法

パルボウイルスは伝染力の強い感染症ですので、院内感染を防ぐため手順を踏んで受診していただけると助かります。

  1. 他にワクチン未接種の猫がいる場合には、隔離する
  2. 直接受診するのではなく、動物病院へ猫の状態や症状を電話で連絡
  3. その子がした便(トイレの砂やシーツごとでOK)をビニール袋に入れて、動物病院を受診。
  4. 待合室には入らず、駐車場に付いた旨を伝えて車で待つ(徒歩などで受診する場合には、事前にどうしたらいいかを確認)

当院では、パルボウイルスの簡易検査キットを常備しています。糞便により検査ができますので、パルボウイルスを疑うペットが来院した場合には、まずは糞便検査を行いその結果によってどのように診察をしていくのかを決めます。

もし、パルボウイルス感染症が確認された場合には、隔離室に入院させて集中治療をしていきます。

まとめ

猫パルボウイルスも犬パルボウイルスも、子猫や子犬に感染すると致死率の非常に高い怖い感染症です。幸いなことに、犬も猫もパルボウイルスはワクチンによって100%に近い防御が可能な病気であり、予防接種を打ってしっかり免疫力を付けておくことが非常に重要です。

普段、家の中から出ない子でも、ホテルに預けたり病院にかかった時にパルボウイルスに感染するリスクはありますし、飼い主さんの手指や衣服、靴などに付いたパルボウイルスを家の中に持ち込んでしまうリスクもあります。特に、子猫がいる家や多頭飼いの家庭にパルボウイルスが入り込んでしまうと非常に大変なことになります。そういったことにならないよう、猫を飼ったら必ずワクチンを打つようにしましょう。

気になることがある場合には、お気軽にお問い合わせくださいね。

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