卵巣腫瘍摘出術~繰り返す子宮蓄膿症の原因

犬や猫の病気のうち、避妊・去勢手術で防げる病気は実はかなり多いです。

ここ数週間の間にそのような病気の診察が続いたので、手術で治療した2例を順番にご紹介いたします。

陰部から膿が出てきたゴールデンレトリーバー

今回ご紹介するのは、6歳のゴールデンレトリーバー、メリーちゃん(仮名)。未避妊のメスです。

1年前から排膿を繰り返す

メリーちゃんは「陰部から膿が出てくる」という主訴で当院を受診しました。

実はメリーちゃん、1年前から数回、同じように陰部からの排膿を繰り返しており、他院で「子宮蓄膿症」と診断され、抗生物質による治療を受けていました。今までは抗生物質で落ち着いていたということでしたが、今回は排膿が収まってから再発するまでの間隔が短くなり、当院を受診されました。

子宮蓄膿症は、生理(発情出血)が来てから1か月程度の間に子宮に膿が溜まってしまう病気です。そのため、1年に2回の生理周期に伴って発症することが多く、メリーちゃんも昨年10月と今年の4月に膿が出て、薬で治してきていました。しかし今回は、10月くらいの予想よりも2カ月ほど早く排膿が始まったとのことです。

子宮蓄膿症の再発

子宮蓄膿症は、非常に怖い病気であり、動物病院を受診したときにはかなり危険な状態になっていることも多い病気です。メリーちゃんも症状からは子宮蓄膿症の再発を強く疑いますが・・・台に飛び乗ろうとするなど院内では非常に元気です。お家での元気食欲もほとんど変わらないとのことです。

子宮蓄膿症の診断は血液検査と超音波(エコー)検査で行うことが一般的で、当院でも血液検査とエコー検査を行いました。

検査の結果は、やはりエコー検査で子宮に液体貯留が確認でき、子宮蓄膿症を強く疑いました。ただし、血液検査では、白血球やCRPなどの炎症の数値はあまり高くなく、全身的な影響は軽度であるようです。メリーちゃんの場合は「開放性子宮蓄膿症」といって、膿が陰部から排泄されて子宮にあまりたくさんたまらないタイプであったため、全身的には影響が少なかったものと思われます。

治療法の相談

子宮蓄膿症の再発が強く疑われるという診断結果をもとに、飼い主さんと治療の相談をすすめました。

今回のポイントは

  • 今まで内服薬で治まっていた
  • 現在元気で全身的な状態は良い
  • 再発を繰り返している
  • 間隔が短くなっている

という点です。そこで飼い主さんに以下のようなお話をしました。

  • 全身状態がよく、100%ではないが今回も薬で治せる可能性は高い
  • 薬で治せてもまた生理周期によって再発する可能性は極めて高い(今後数年間何度も繰り返す)
  • 周期が短くなっていることから卵巣にも異常がある可能性がある
  • 手術をすれば再発を防ぐことができる
  • 手術にはリスクはあるが、年齢的にも全身状態的にもリスクは高くはない
  • 今すぐ手術が必要ではないが、悪化するなら手術は必要

治療方針の相談の結果、薬で子宮の膿を抑えられるだけ抑えて、リスクを減らした段階で手術を実施するという治療方針となりました。

内服薬を処方して経過観察

そこで、まずは内服薬を1週間処方して経過観察をすることになりました。

1週間後の再検査では子宮の膿は確認できず、陰部からの排膿も止まっていました。そこでもう少し内服薬を処方し、ホルモンが落ち着いて出血が少なくなる時期を選び、手術を実施することにしました。

卵巣子宮全摘出術

9月後半に手術の予定を取り、卵巣子宮全摘出術を実施しました。

卵巣に大きな異常が

通常通り全身麻酔をし、腹部にメスを入れ開腹して、子宮と卵巣の状態をチェックしてみると、子宮には明らかな膿の貯留は認められませんでした。一方、卵巣には、一瞬腎臓と見間違えるような大きな腫瘤が形成されていました。

卵巣と子宮をその腫瘤ごと摘出したのがこちらの写真です。

摘出した子宮と卵巣(クリックすると実際の画像を見れます。苦手な方はクリックしないでください)

卵巣の拡大図。5㎝程度の大きな腫瘤になっており、嚢胞のようなものもがいくつか見えます(実際の画像を見たい人はクリック)

子宮を切開して粘膜面を見た画像。ほんのわずかな膿と、子宮粘膜の増殖(過形成)が認められます。(実際の画像を見たい人はクリック)

出血がないことを確認し、閉腹して麻酔を覚まして手術は終了です。約1時間の手術となりました。

病理検査の結果、良性腫瘍と判明

手術後メリーちゃんの回復は非常に良好でした。

飼い主さんに切除した子宮と卵巣を見てもらい、卵巣に大きな異常が認められたことをお話しし、病理検査に出しました。

病理検査の結果は、以下の通り「卵巣嚢胞状腺腫」という良性腫瘍でした。

病理検査結果

メリーちゃんは、卵巣の腫瘍があったせいでホルモンの異常によって異常な発情とそれに伴う子宮蓄膿症の再発があったものと考えられます。

幸い、卵巣の腫瘍は良性であり、マージンも問題なし(切除良好)で予後は良いという結果でした。放置していたら子宮蓄膿症を繰り返していた可能性が高く、切除してよかったと思われます。

メリーちゃんの現在

メリーちゃんは抜糸も終え、何も問題なく生活しています。もともととっても元気なわんちゃんでしたが、術前と全く同じで元気に過ごしているとのことです。

ただし、術後に一度トラブルがありました。それは手術に関係したものではなく、薬の誤食。。。術後に処方した抗生物質を、袋ごと丸々3日分食べてしまい、病院を受診しました。

催吐処置により、1つの袋は吐かせることができましたが、残り2つは出てこず、、、便に出て来るのを待っています。

まとめ

今回ご紹介したメリーちゃんは、卵巣の異常によって子宮蓄膿症を繰り返していたモノと思われます。子宮蓄膿症を薬で抑えても、卵巣の腫瘍を切除しないと同じように繰り返していたことが予想され、今回無事に卵巣子宮全摘出術を行うことができ今後のことを考えるととてもよかったです。

卵巣の病気も子宮の病気も、若いころに避妊手術をしておけば基本的に100%防げる病気です。また、子宮蓄膿症は命にかかわることも多い怖い病気ですが、手術をすることにより完治させることのできる病気です。

子どもを産ませる予定がない場合には、乳腺腫瘍の予防にもなりますので若いうちに避妊手術をすること、子宮蓄膿症など子宮の病気が疑われる場合には麻酔のリスクが少ないのであれば早めに手術で切除することが、愛犬・愛猫に元気で長生きしてもらうためにはおすすめですね。

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