膀胱結石摘出術

犬と猫の病気の中には、季節によって発生が増えたり減ったりする病気があります。例えば夏の熱中症や皮膚病、春秋のノミ・ダニ、冬の猫風邪(FVR)などがその例です。そんな病気の一つ、泌尿器系の疾患は、飲水量が減少する秋から冬にかけて注意が必要になります。

今回は、先日行った膀胱結石の手術を通して、膀胱結石についてお話いたします。

しろちゃん(仮名)ケアンテリア 11歳 オス

今回ご紹介するのは、11歳ケアンテリア(♂) しろちゃん(仮名)です。

尿が赤いことに気付き来院

しろちゃんのカルテ番号は1ケタ台、当院の開院初日に来てくれたわんちゃんです。当初は、皮膚の痒みやドライアイ(KCS)を主訴として来院されていました。内服薬や目薬などで皮膚と目は落ち着いていましたが、飼い主さんがしろちゃんの「尿が赤い」ということに気付いて来院されました。

検査で膀胱結石を確認

尿検査でも血尿が出ていたため、エコー(腹部超音波)検査を行ったところ、膀胱内に結石のような陰影を確認しました。そこで、結石の確認のためレントゲン検査を行いました。その画像がこちらです。

しろちゃんのラテラル(横向き)像のレントゲン。赤丸の位置にある膀胱内に白い複数の膀胱結石が確認できる。

犬の膀胱結石には、いくつかの種類の結石がありますが、圧倒的に多いのはリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)結石とシュウ酸カルシウム結石です。前者は食餌療法で解かせることが多い結石、後者は基本的には手術で取る必要があります。

結石の種類は、尿中に結石の成分である「結晶(けっしょう)」が出ていれば推測(確定ではありません)できますが、しろちゃんの尿には結晶が出ておらず、どちらも結石かは不明でした。

食餌療法か手術か

検査の結果、

  • 血尿の原因は膀胱結石である可能性が高い
  • 膀胱結石の種類は不明

ということがわかりました。治療法としては大きく以下の2つの方法に分かれます。

  • 食餌で溶解する内科療法
  • 手術で結石を取り出す外科療法

しろちゃんの結石は溶けるかどうか不明でしたが、手術は避けたいという飼い主さんの希望もあり、まずは食餌療法を実施することになりました。

食餌療法の効果なく手術へ

しろちゃんは定期的に検査をしながら食餌療法を実施しました。しかし、2か月たっても結石のサイズは変わりません。

食餌療法の効果がなく、時々血尿が出てしまうため、飼い主さんと相談の上、手術をすることにしました。

膀胱結石摘出術

しろちゃんは術前の身体検査、血液検査、レントゲン検査などで膀胱結石以外に大きな異常は認められなかったため、一般的な麻酔法によって手術を行いました。

開腹し膀胱を切開

麻酔をし、モニターに異常が認められないことを確認し、手術をスタートします。手術前にペニスからカテーテルを入れ、膀胱の洗浄(しろちゃんは慢性的な膀胱炎を起こしているため、事前に膀胱をきれいにしておくため)をしました。その後、毛刈り・消毒をして膀胱結石摘出術を介します。

まずは、通常通り下腹部の皮膚と腹壁を切開ますが、オスのわんちゃんではペニスがありますので、ペニスを避けて切開をすすめます。

腹壁の切開が完了したら膀胱を確認して腹腔外へ牽引します。膀胱の周りに滅菌ガーゼを敷き詰め、尿が漏れてもお腹の中に入らないようにしました。その後、膀胱の切開をしましたが、慢性膀胱炎のため非常に粘膜が分厚くなっていました。

切開した膀胱。慢性膀胱炎のため、正常は1㎜程度の膀胱粘膜が数倍に分厚くなっています。

結石の摘出

膀胱の切開が終わったら、次に膀胱結石を摘出します。しろちゃんの場合には、大きな結石があるわけではなく、5㎜以下の小さな結石が数個存在するため、分厚い粘膜と膀胱からの出血に紛れてしまい、結石を探すのも大変でした。

膀胱粘膜は繊細であり、見えない場所をピンセットなどで傷つけてしまうのを避けるため、膀胱結石スプーンと呼ばれるスプーン状の器具で優しく探りましたが、なかなか出てきません。そこで、ペニスから挿入したカテーテルから滅菌生理食塩水をフラッシュし、水圧で膀胱外に結石を押し出す方法を試しました。体位を変えながら数回フラッシュすると、何かの種子のような形の膀胱結石が数個出てきました。

実際に出てきた膀胱結石。大小さまざまな膀胱結石を摘出しました。

膀胱の縫合

膀胱内に結石が残らないよう何度かフラッシュをして、膀胱の縫合に入ります。

膀胱の縫合。写真の上にうつっているのが合成吸収縫合糸です。

膀胱粘膜を直接つままないようにしながら膀胱を縫合します。膀胱の縫合糸は、合成吸収糸という組織反応が少なく数か月で溶けてしまう糸を使用します。また、膀胱の菌に対し比較的安定性の高い糸を選んで使いました。

膀胱の縫合が終わったところで、膀胱に生理食塩水を注入して膀胱から漏れがないことを確認し、癒着を防ぐため大網(たいもう)と呼ばれる膜で膀胱を包みました。こうしておくことで術後に膀胱が周囲の臓器に癒着して、痛みや排尿困難などを起こすのを防ぐことができます。最後に腹壁、皮下、皮膚と縫合し、レントゲンで膀胱や尿道内に結石の取り残しがないことを確認し、手術終了です。

手術前と手術後のレントゲン写真。手術前には赤丸の位置にある膀胱内に白い複数の膀胱結石が確認できますが、手術後には1つも確認できません。膀胱結石を取り残していないかどうかは、術後にレントゲンを撮って初めて確認することができます。

摘出した膀胱結石は、結石鑑定に出し、その種類を確認して今後の食餌療法などの参考にします。

まとめ

しろちゃんの場合には、膀胱結石が長く膀胱内にあったことで慢性膀胱炎を起こしていたようです。

膀胱結石の症状は

  • 頻尿
  • 血尿
  • 排尿時間の延長
  • 繰り返す膀胱炎

などですが、他覚症状(飼い主さんがわかる症状)を出さないまま長い子と生活をするわんちゃん猫ちゃんも少なくないようです。自覚症状(動物本人が感じる症状)があるのかどうかはわかりませんが、結石があることで常に膀胱に違和感や痛み、残尿感が出ている可能性があります。

膀胱結石の治療にはしろちゃんのように外科手術が必要になることもありますが、食餌療法で治療や予防ができることもあります。膀胱結石は超音波検査で簡単に見つけることができますので、気になることがある方だけでなく、健診などをしたことがない方はぜひご相談下さい。11月末までは健診キャンペーンもやっていますので、この機会に愛犬・愛猫のためにも検診を考えてみて下さいね!

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