お尻の横から出血が!犬と猫の肛門嚢破裂って?

基本的に、犬や猫の体の構造は、ヒトの体はほとんど同じです。しかし、犬や猫の体にあって、人の体にない臓器が実はあるのです。

その一つが「肛門嚢」。お尻に付いている、いわゆる「におい袋」と言われる組織です。この肛門嚢が炎症を起こす「肛門嚢炎」は犬や猫に多い病気であり、ひどくなると皮膚に穴が開く「肛門嚢破裂」をしてしまうこともあります。

突然、愛犬のお尻に血が・・・

今回ご紹介するのは、ジャックラッセルテリアのしろちゃん(仮名)、8歳の女の子です。以前、他のわんちゃんの診察をして以来、大垣から通ってくれているご家族の同居のわんちゃんです。

しろちゃんがお尻歩きをしている

飼い主さんがしろちゃんの症状に気付いたのは昨晩のことでした。お尻をこするようにお座りした状態で歩く(いわゆる「お尻歩き」)ので、見てみるとお尻の横から血が出ているのに気付いたそうです。

とりあえず元気や食欲はあったため、一晩様子を見て、朝にお電話いただきました。お電話でお話を伺ったところ、「肛門嚢破裂」の疑いが非常に強かったためその旨をお伝えし、来院していただきました。

やはり肛門嚢破裂が

しろちゃんは診察室まで元気に歩いて入ってきてくれたので、まず慌てずお話を確認し、簡単に全身の身体検査を行います。

稟告(飼い主さんへの問診)で特定の病気が疑われた場合にも、他の病気が隠れていないかどうかしっかり身体検査をするのは大切です。いわゆる「木を見て森を見ず」の状態にならないよう、局所の異常を見るのは全身の異常を確認してからになります。聴診や視診などの身体検査には問題がなく、検温するために尻尾を少し上げてみると・・・やはり肛門嚢の部分に穴が開いています。

お尻の拡大図。黄色の丸が肛門、赤丸が左右の肛門嚢の位置。左の肛門嚢が破れ、矢印先端部に穴が開いています。お尻の左側は浸出液で少し汚れています。

とりあえず体温を測り、発熱がないことを確かめて肛門嚢の確認に入ります。

肛門嚢の確認は直腸検査

穴が開いている部位が本当に肛門嚢なのか、また肛門嚢の状態がどうなっているのかを確認するために行うのが「直腸検査」です。

直腸検査は、手袋をして指を肛門に挿入し手行う検査で、肛門嚢以外にも、直腸ポリープの有無や前立腺の腫れなどをチェックするためにも良く行う検査です。

直腸検査をしてみると、硬く腫れた肛門嚢が確認できました。やはり、肛門嚢破裂で間違いないようです。

治療は洗浄と薬

肛門嚢破裂の原因は、肛門嚢の感染と膿の貯留です。そのため、溜まっている膿を洗い流し、感染や炎症を抑える薬を使います。

肛門嚢の洗浄

肛門嚢の破裂を起こしている場合、まずは溜まっている膿を穴から絞り出します。直腸検査で確認したらそのまま肛門嚢を指でしっかりつかみ、ゆっくりと内容物を絞り出します。

絞り出した内容物。黒い肛門嚢の分泌液に出血が少し混じっています。見る限りでは膿はあまり多くは溜まっていません。

しぼった内容物にはそれほど多く膿が含まれていなかったため、感染より炎症がメインの肛門嚢炎があると想像されます。内容物をある程度絞り出した後、滅菌生理食塩水で肛門嚢をきれいに洗浄しました。

抗生物質と消炎剤の注射

肛門嚢の洗浄で大部分の膿はきれいなりますが、菌を完全に排除することはできません。そこで、抗生物質の注射を行い、残った菌が全身に回らないようにします。

また、しろちゃんは肛門嚢の炎症が強く、硬く腫れていたため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も使用し、抗炎症療法も同時に行いました。

内服薬を処方し治療終了

肛門嚢の感染と炎症は少し続きますので、内服でも抗生物質と消炎剤を処方しました。

本来であれば、数日後に肛門嚢の状態をチェックしたいところですが、しろちゃんは当院へ来るのに1時間近くかかってしまうので、家でしっかり注意をしてもらい、調子が良ければ内服を飲み切って治療を終了してもらうことにしました。

発熱があったり、食欲が落ちている場合には、血液検査や点滴をしたり、翌日来院してもらうこともあります。しろちゃんのように全身状態がよく、肛門嚢の状態も悪くない場合には、洗浄とお薬で1週間程度で完治することが多いです。

今回しろちゃんにかかった費用は約6,000円でした。肛門嚢破裂の治療は大体5,000円~8,000円くらいになりますが、点滴や血液検査を行うと10,000円前後かかることもあります)

肛門嚢破裂のまとめ

今回ご紹介した肛門嚢破裂のまとめです。

  • 症状:急なお尻の痒みや痛み(お尻歩きやお尻を頻繁に舐める行動)と出血
  • 原因:肛門嚢の感染・炎症
  • 治療:排膿と洗浄、薬の注射や内服
  • 予後:良好(通常1週間程度で完治します)
  • 注意点:肛門嚢が溜まりやすい犬では再発が多い
    痛みが強い病気なので、予防や早めの治療が大切

今回のしろちゃんは、比較的早くつれてきていただいたこともあり、全身への影響が少なく、1度の治療で完治できる可能性が高いと考えます(またその後の状態は追記いたします)。

犬や猫では、肛門嚢破裂だけでなく、その手前の肛門嚢炎や肛門嚢の貯留などの病気が非常に多く発生します。早期に発見すれば、破裂する前に治療ができることも多いので、愛犬・愛猫がお尻を気にしている場合には肛門嚢の病気の可能性も考え、早めに動物病院を受診してくださいね!

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