猫のお尻から長い虫~なかなか手ごわいマンソン裂頭条虫

猫にはさまざまな病気がありますが、衛生環境の改善や室内飼いの増加などで感染症や寄生虫症はかなり減ってきました。それでもまだまだ猫のお腹の虫(消化管内寄生虫)はしばしば遭遇する病気です。

その中でもマンソン裂頭条虫は、通常の虫下し(駆虫薬)が効かない厄介な虫です。今回は、そんなマンソン裂頭条虫についてお話しします。

年末に続いたマンソン裂頭条虫

「同じ病気が立て続けにくる」―――実は動物病院あるあるです。子宮蓄膿症や骨折、尿路閉塞など、普段それほど多くない病気なのに数日のうちに2-3件同じ病気が重なって来ることはしばしば経験しています。

今回のマンソン裂頭条虫も、開業以来一度も見ていなかったのに、1週間に3件続きました。すべての症例が、「お尻から長い虫のようなものが出た」という主訴で、現在はお家の中に住んでいるが、昔は野良猫生活をしていた猫ちゃんでした。

マンソン裂頭条虫とは

では、マンソン裂頭条虫について簡単に解説いたします。

寄生虫の「条虫」の仲間

実際に便に混じって出て来たマンソン裂頭条虫。1つの虫がいくつかに切れていますが、全長数ⅿはありそうな長い虫です。

猫や人に感染する寄生虫には、いくつかの仲間がいます。回虫や蟯虫など細長い形をした「線虫」、ジアルジアやトリコモナスなどの「原虫」も人や猫のお腹の中に棲む寄生虫です。

マンソン裂頭条虫はその名の通り、条虫の仲間です。条虫は、真田紐に似ていることから「サナダムシ」として知られている寄生虫です。

条虫の特徴は、片節(へんせつ)と呼ばれる短めの部位がいくつも連なって非常に長い虫体を作ることです。その長さは10mに達することもあり、猫に寄生するマンソン裂頭条虫も1mくらいになることもある非常に長い寄生虫です。片節の中には虫の卵が入っており、引っ張ると簡単にちぎれます。

マンソン裂頭条虫が成長するのに必要な中間宿主

マンソン裂頭条虫は、犬にも猫にも人にも感染する寄生虫ですが、圧倒的に猫に感染することが多いです。その理由が「中間宿主」です。

寄生虫には、一つの宿主(寄生する動物)ノミでいい寄生虫と、いくつかの宿主(中間宿主)を経由しないと成長できない寄生虫がいます。マンソン裂頭条虫は、2つの中間宿主を経由して犬や猫に感染します。

まず1つ目(第一中間宿主)がケンミジンコというミジンコの仲間です。猫の便と一緒に体外に出たマンソン裂頭条虫の卵は、雨などで川に流れつき、そこでケンミジンコに食べられます。ケンミジンコの体内である程度成長して次の宿主に食べられるのを待ちます。

第二中間宿主はカエルやヘビです。カエルやヘビがケンミジンコを食べると、その体内でさらに成長して犬や猫などの終宿主に食べられるのを待ちます。

犬や猫の腸管内で成虫に成長

マンソン裂頭条虫に感染したカエルやヘビを犬や猫などが食べることで、マンソン裂頭条虫に感染します。犬より猫の方がカエルやヘビを食べることが多いので、マンソン裂頭条虫は外に行く猫に圧倒的に多い病気となります。

犬や猫の腸管内でマンソン裂頭条虫は成長し、成虫となります。卵を持った成熟成虫になると、片節が切れて便に混じったり、虫そのものがお尻から出てきたりします。マンソン裂頭条虫は必ず中間宿主を必要とする寄生虫であり、卵の状態では犬や猫などに感染することはできないため、たとえ虫や便を他の犬や猫が食べてしまっても、感染することはありません。

同じように、人も犬や猫の便に含まれた虫や変節を口にしてしまってもマンソン裂頭条虫に感染することはありません。人も、マンソン裂頭条虫に感染したカエルやヘビを食べることで、まれに感染することがあります。

マンソン裂頭条虫の症状

マンソン裂頭条虫は腸管内に寄生しますが、特別症状を出さないことも多いです。子猫に大量に寄生すると強い症状を起こすことがあります。マンソン裂頭条虫に感染して出てくる可能性のある症状は以下の通りです。

  • 片節や虫体の排泄
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 栄養不良
  • 被毛粗剛(ひもうそごう)

マンソン裂頭条虫の治療

マンソン裂頭条虫症の最も厄介なところが、通常の駆虫薬では効果がない(大量の駆虫薬が必要)という点です。

猫の寄生虫によく使うレボリューションやブロードラインなどのスポットオン製剤は、マンソン裂頭条虫には効果がないと言われています(ブロードラインは猫条虫や瓜実条虫には効果があります)。

そこでマンソン裂頭条虫には高用量の駆虫薬の注射か飲み薬を使うことになります。注射はかなり痛がる猫が多く、飲み薬はかなり大きいため飲ませるのが大変ということがあり、当院では飲み薬を使って治療します。結構大きな粒ですので、お家で飲ませるのが難しい場合には院内で投薬させていただいております。通常、薬が飲めれば一度の投薬で駆虫が終了します。

まとめ

寄生虫は昔の病気のイメージですが、現在でも猫の病気として一般的です。特に、外に行く猫や産まれて数か月の子猫には寄生虫はまだまだ多く、突然便に虫が出てきて驚いてしまうことも少なくありません。

特に猫を飼い始めたときや、外に行く猫ちゃんには定期的に、駆虫薬の投与や検便がおすすめです。お腹の中の寄生虫は命にかかわることは少ないですが、健康にいいものではありませんので、健康チェックのためにも愛犬・愛猫の便も注意して見てあげてくださいね!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です