アレルギー検査、受けてみませんか?

動物病院にはさまざまな病気のわんちゃん猫ちゃんが来院します。その中で一番多い病気って何かご存知でしょうか?

ペット保険の大手「アニコム」が発表している保険請求件数が最も多い病気は、犬では「皮膚疾患」、猫では「消化器疾患」です。特に犬の皮膚疾患は非常に多く、保険請求の4件に1件(25%)は皮膚疾患によるものとなっているようです。

犬の皮膚疾患の原因の一つ「アレルギー」は、よく聞く名前ではありますが、よくわかっていない飼い主さんも多いようです。今回は、時に一生悩まされ続けることもある犬のアレルギーについてお話ししたいと思います。

そもそもアレルギーってなんだ?

Wikipediaを見てみると

アレルギー(独: Allergie)とは、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることをいう。

となっています。

よくわかりにくいですが、何かしらの物質(抗原)に対して、免疫反応が過剰に起こる現象をアレルギーと言います。つまり、アレルギーにはアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)と体の免疫反応の2つがあって初めて起こる現象です。

犬の皮膚病を起こす2つのアレルギー

犬の皮膚に起こるアレルギー反応は次の2つに分類されます。

犬アトピー性皮膚炎

犬アトピー性皮膚炎は、ハウスダストや花粉など「環境アレルゲン(環境中に存在するアレルギー物質)」が原因となって起こるアレルギー性皮膚炎です。環境中に存在するものに対して、免疫反応が異常に強く出てしまう病気であり、完治させることは困難です。しかし、環境アレルゲンを特定できれば、そのアレルゲンを避けて生活することで症状を改善することは可能です。

食物アレルギー

食物アレルギーはその名の通り、フードに含まれる成分に対するアレルギーです。ヒトでは食物アレルギーによるアナフィラキシーなどが有名ですが、犬の食物アレルギーは、皮膚炎の症状が出るケースが非常に多いです。下痢や軟便なども食物アレルギーの症状として出てくるケースがあります。

アレルギーの検査はできる?

ここ数年で、犬のアレルギー検査は非常に進化してきました。猫はまだアレルギー検査が確立していない部分もあります。

犬のアレルギーに関与するIgEとリンパ球

アレルギー反応はさまざまな細胞や物質が複雑に絡み合って起こりますが、その主役となるのがIgEとリンパ球です。

抗原特異的IgE

IgEは免疫グロブリンと言われるたんぱく質です。IgEは抗原特異的と言って、ある種の抗原(アレルゲン)に特異的に反応し、アレルギーを引き起こす物質です。血液の中のIgEを調べると、どの物質に反応するIgEが増えているかということが分かります。

リンパ球

リンパ球は白血球の1種であり、抗原(アレルゲン)を識別して攻撃することのできる細胞です。リンパ球はIgEとは別のルートで免疫反応を引き起こします。

犬アトピー性皮膚炎はIgEを検査

犬アトピー性皮膚炎に関わるのは、IgEだと言われています。そのため、犬アトピー性皮膚炎が疑われる場合には、IgEの検査がすすめられます。

食物アレルギーはIgEもリンパ球も調べる必要あり

一方、食物アレルギーにはIgEもリンパ球もどちらの物質もかかります。そのため、食物アレルギーの検査を行う場合には、IgE検査とリンパ球反応検査のどちらも行わなければなりません。

アレルギー検査の進め方

では、具体的に一般的なアレルギー検査の進め方をお話いたします。

アレルギーが疑わしいかどうか?

犬の皮膚病にはアトピーや食物アレルギーなどのアレルギー性疾患以外にも、寄生虫や真菌症、細菌性皮膚炎などがあり、これらの病気でもアレルギー性疾患同様皮膚に痒みや赤みを起こすことがあります。

アレルギーを疑う前に、これらの病気がないかどうか皮膚検査をしたり、症状をもう一度チェックしたり、場合によっては試験的治療をして治ってこないかどうかを診ていくこともあります。

犬アトピー性皮膚炎か食物アレルギーか?

アレルギー性皮膚炎が疑わしい場合には、次に考えるのが犬アトピー性皮膚炎があやしいのか、食物アレルギーが怪しいのかということです。犬アトピー性皮膚炎が怪しい場合にはIgE検査のみでいいですが、食物アレルギーが怪しい場合にはIgE検査とリンパ球反応検査が必要になります。その鑑別としては以下のような点に注目します。

  • 季節性の有無:特定の季節だけ皮膚の痒みや赤みが出る場合には、アトピー性皮膚炎が怪しくなります。一方、食物アレルギーには季節性はありません。ただし、季節性がないからと言ってアトピー性皮膚炎が否定できるわけではありません。
  • 初発年齢:食物アレルギーは1歳未満から発症することが多いです(フードやおやつを変えた場合はこの限りではありません)。一方、アトピー性皮膚炎は2-3歳で発症することが多いと言われています。
  • 排便回数:食物アレルギーは消化器症状を伴うことも少なくありません。下痢気味な犬や下痢や軟便でなくても排便回数が1日3回以上の犬は食物アレルギーの影響がある可能性もあります。
  • 病変部位:アトピー性皮膚炎も食物アレルギーもどちらも耳や脇、手足の先などに痒みや赤みなどの症状が出てきます。しかし、背中やお尻などは食物アレルギーでは症状が出やすく、犬アトピー性皮膚炎では症状が出にくい場所だと言われています。

表:犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを鑑別する典型的な症状

犬アトピー性皮膚炎 食物アレルギー
季節性 あり なし
初発年齢 2-3歳 1歳未満
排便回数 1日2回以下 1日3回以上
背中やお尻の痒み・赤み なし あり

検査に進むか試験的治療をするか

次に、いきなり検査を行うか試験的治療を行うかを相談します。

アレルギー検査を行うメリット

  • 原因がわかり、適切な治療ができる可能性が高くなる
  • ステロイドなど副作用の強い薬を最小限に抑えることができる
  • 不要な薬やフードを与える必要がないため、長期的に見ると治療費の節約につながる可能性がある
  • 検査は保険適応である(1日の限度額があるので注意)

アレルギー検査を行うデメリット

  • 費用が高額(IgE1種類の検査だけでも1万円以上します)
  • 採血が必要(特にリンパ球反応検査には多めの血液が必要となります)
  • アレルギー検査はあくまでどの物質に反応しやすい体質なのかを調べる検査であり、100%治療法を確立するための検査ではない

アレルギー検査を進める例

以下のようなわんちゃんには、アレルギー検査がおすすめです。

  • いつも症状が出たら薬を使うということを繰り返している
  • 症状が再発する若い犬(今後も長くアレルギーと付き合っていく必要がある可能性が高く、検査のメリットは大きいです)
  • だんだん薬の量が増えてきている
  • 原因をはっきりしたい飼い主様
  • ペット保険に入っている犬(大部分は保険適応になるので費用も安く済みます)

試験的治療を試してもいい例

一方、以下のようなわんちゃんには、いきなりアレルギー検査を行うのではなく食餌療法や薬などの試験的治療をしてみるのも一つです。

  • 初めてアレルギー症状の出た犬
  • 食餌やおやつを変えた・散歩コースを変えたなど、アレルギーの原因となりそうな要因がはっきりしている
  • マレにアレルギー症状が出て、短期間の治療ですぐに治る

アレルギー検査の受け方

アレルギー検査は、採血するだけで行うことができますが、そのタイミングには少し注意が必要です。IgE検査とリンパ球反応検査を一回の採血で行うこともできますが、その場合にはリンパ球反応検査の予約が必要となります。

アレルゲン特異的IgE検査

IgE検査は、予約不要でいつでも行うことができます。ただし、以下のような条件での検査をおすすめします。

  • 生後6カ月齢以降
  • ワクチン接種から1か月以上間隔があいている
  • 現在アレルギーの症状が出ている

IgE検査は、通常の血液検査と同様1mlの血液があれば行うことができます。

リンパ球反応検査

リンパ球反応検査を受けたい方は以下の点を守っていただく必要があります。

  • 要予約(検査センターの営業日の前日午前中の受診が必要になります。金曜・土曜・祝日前日は検査できません。翌日月曜が祝日でなければ日曜日も検査は可能です)
  • 現在薬を飲んでいる犬では、種類によっては2週間程度の休薬が必要(予約時にお問い合わせください)

リンパ球反応検査には、1.5mlの血液が必要となります。通常、「主要食物アレルゲン(9項目)」と「除去食アレルゲン(9項目)」の検査を行いますので、通常の血液検査より多めの3mlの血液が必要となります。

アレルギー検査当日の流れ

  1. 予約があれば予約の時間に来院(休薬の指示がある場合には必ず守る)
  2. 身体検査
  3. 必要な量の採血

アレルギー検査には、10分程度もあれば十分です。ただし、初診の方やいろいろ相談したい方は30分程度のお時間を見ていただくことをおすすめします。アトピー性皮膚炎を疑っていてIgE検査のみご希望の方も、予約しておいていただくことをおすすめします。

検査結果の説明

通常の血液検査は、院内の機械で検査が可能ですのでそのまま15-20分ほど待っていただいて結果説明となりますが、アレルギー検査は検査センターに血液を郵送して検査をしてもらいます。そのため、当日は診察と採血をしていったん帰っていただきます。

だいたい1~2週間で結果が返ってきますので、その結果をお電話でお伝えします。その後、治療の相談のためにご来院いただくか、検査結果を郵送させていただきます。ただし、アレルギー検査の解釈は少し複雑になることもあるため、できれば結果が出たら一度ご来院いただいてお話しさせていただく方がいいでしょう。

アレルギー検査を受けた後の治療

アレルギー検査は治療方針を決めるための検査であり、検査を受けただけで終わってしまっては意味がありません。

以下が代表的な治療方法となります。

アトピー性皮膚炎の場合

環境アレルゲンに反応するIgEが増えていてアトピー性皮膚炎の可能性が高い場合には、以下のような治療法があります。

  1. アレルゲンとの接触を避ける
    体質を変えることは難しいため、アレルゲンとの接触を避ける方法を考えます。具体的には以下のような方法があります。
    ・雑草・牧草・樹木に対するアトピー:その雑草や牧草が増える季節には、牧草のある場所を散歩コースに入れない。散歩前に眼の表面を保護する目薬を差す。散歩後に手足をしっかり洗う。など
    ・ハウスダストやカビに対するアトピー:部屋の掃除や換気をこまめに行う。空気清浄機を付ける。布団に近づけない。フローリングにする。など
  2. ハウスダスト(ヤケヒョウダニ・コナヒョウダニ)に対しては、アトピー治療薬を使う
    ハウスダストへの犬アトピー性皮膚炎に対しては、犬用の治療薬を使うことも可能です。アトピーは基本的に治すことはできませんが、アトピー治療薬の適応になった場合には、体質を改善して治すことが可能な例もあります。ハウスダストへのアトピーがある犬すべてに対する治療法ではありませんが、アトピー治療薬による治療も可能となります。
  3. 免疫抑制薬やサプリメントなどの補助治療も
    アトピー性皮膚炎では、アレルゲンを完全に回避できないケースも少なくありません。そのため、症状が出てしまう季節には薬を飲無必要が出てくるケースもあります。また、皮膚や粘膜のバリア機能を高めたり、炎症を抑えるようなサプリメントを継続的に飲んでいくこともおすすめです。

食物アレルギーの場合

アレルゲン特異的IgE検査やリンパ球反応検査で、食物アレルゲンに対する反応が高い場合には、食物アレルギーが疑わしくなります。その場合の治療法は以下の通りです。

IgEが関与する食物アレルギー

食物アレルギーのうち、アレルゲン特異的IgEが上昇するタイプの食物アレルギーの場合、加水分解フードが有効です。

加水分解フードとは、アレルギーの原因となり得るたんぱく質を加水分解して分子量を極端に小さくした食餌です。「低分子プロテイン」「z/d」などの食餌は加水分解フードであり、食物アレルギーのうちIgEが反応するアレルギーに有効な食事です。

リンパ球が関与する食物アレルギー

犬の食物アレルギーの約8割はリンパ球が関与する食物アレルギーだと言われています。リンパ球は加水分解したタンパクにも反応するため、リンパ球が関与する食物アレルギーは、特定の成分を除去した「除去食」が必要となります。

基本的には、フードの原材料をチェックして検査結果で陽性となっている成分を含まないフードを選ぶことが大切です。ただし、原材料に記載されていないような添加物などが含まれるケースもあるため、信頼性の高いフードを選ぶことも大切になります。フードの選択に関しては、できる限り病院で相談して決めていくことをおすすめします。

食物アレルギーは完治も可能

食物アレルギーはIgEやリンパ球どちらが関与するものでも、完治は可能です。ただし、フードだけでなくおやつなども気を付ける必要がありますので、注意してください。

まとめ

犬のアレルギー性皮膚炎は非とてもよく遭遇する病気ですが、お薬で一時的に良くなることが多く、原因がわからなくてもまずは治療をしていくというケースがほとんどです。

ただし、長く痒みと付き合わないといけない例も多く、薬の副作用が出てしまうケースもあります。特に若い犬や再発しやすい皮膚炎を持つ犬では、アレルギー検査をしてしっかり原因を調べて、適切な治療を行うことが大切だと考えます。

基本的には命にかかわる病気ではありませんが、アレルギー性皮膚炎は痒みでQOL(生活の質)を大きく低下してしまう病気ですので、愛犬のためにもアレルギー検査を考えてみて下さいね!次回から、当院でアレルギー検査を受けたわんちゃんの例をいくつかご紹介いたします。

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