犬のフィラリア症① フィラリアという虫を知ろう

春になるとやってくるフィラリアの検査とフィラリアの予防。「はがきが来たから病院へ行こう」「毎月飲ませてくださいと言われたから薬を飲んでいる」――そんな飼い主さんも少なくないのではないでしょうか?

でも、何も知らないまま愛犬にお薬を飲ませていていいのでしょうか?せっかくだから愛犬と自分にとって一番いい薬を選んでみませんか?このシリーズでは、飼い主さんにフィラリア症について知ってもらい、しっかりした予防をしてもらうことを目的に記事を書いていきます。

第一回は「フィラリアの虫」についての記事です。

フィラリアの分類・形

フィラリアは線虫に分類される

フィラリアは、「動物界」―「脱皮動物上門」―「線形動物門」に分類される寄生虫です。動物界は人間も含まれる動物全般、脱皮動物門には虫と呼ばれる節足動物が含まれます。つまり、虫に近いけれど虫とは違う動物ということですね。

この線形動物門に含まれる生物すべてを「線虫」と呼びますが、線虫にはなんと1億種類の生物がいるとも言われているそうです。フィラリア以外には、回虫や鞭虫など動物に寄生する生物、「ネクサレセンチュウ」など植物に寄生する生物、土の中で自由生活をする線虫などがいます。

フィラリアはそうめんのような外見をしている

フィラリアは、15~30㎝の長さの白い細長い虫です。フィラリアの虫はよく「そうめん」に例えられますが、まさにゆでられたそうめんのような外見をしています。もちろん虫ですので、ゆでたそうめんよりは硬く、弾力があります。

フィラリアには雄と雌がおり、メスの方が体が長い傾向にあります。フィラリアは成長すると心臓や肺動脈に住むため、体の外に出てきて飼い主さんが見つけるということはありません。もし、フィラリアのような虫が落ちていた場合は、お腹の中に住む回虫の可能性があります。

フィラリアの生活環:蚊と犬の中でのライフサイクル

フィラリアは犬と蚊がいて初めて成長・繁殖を行うことができます。どちらが欠けてもフィラリアは絶滅してしまいます。以下にそのライフサイクルの図を載せておきます。

フィラリア 生活環 ライフサイクル

この図のように、フィラリアは犬の体内で成長し、ミクロフィラリアを産み、そのミクロフィラリアが吸血の際に蚊の体内に入り込み、ある程度まで成長して、蚊の吸血の際に犬の体内に入り込むということを繰り返しています。

フィラリアのライフステージ

では、それぞれのライフステージで、フィラリアがどのような特徴を持っているか見てみましょう。

ミクロフィラリア(L1):300μm(0.3㎜)

長さ300μmの非常に小さな虫です。顕微鏡では赤血球の直径の数倍の長さの細長い虫として観察することができます。もちろん肉眼で見ることはできません。以下にミクロフィラリアの顕微鏡動画を載せておきますので、参考にしてみてください。うねうね動いている透明なものがミクロフィラリアで、その周りの赤いものがすべて赤血球です。

https://www.youtube.com/watch?v=KjD6h6dLkx4

ミクロフィラリアは、犬の血液の中で1~2年の間生きることができると言われています。蚊が吸血した際に犬の血液から蚊に感染し、蚊の体内で数回脱皮をしL3になります。

三期幼虫(L3):1.3㎜

蚊の中で成長したミクロフィラリアは三期幼虫(L3)になって感染性を持つようになります。ミクロフィラリアから三期幼虫になるためには、環境の温度がある程度高い必要があります。蚊の体内でフィラリアが感染能力を持つ指標にHDU(Heartworm  Development Unit)という平均気温の考え方があり、冬場に蚊がいたとしても、その蚊の体内には犬に感染可能なフィラリアの虫はいないのです。

HDUはフィラリアの予防期間の考え方に非常に重要になりますので、こちらの記事を参考にしてみてください。

五期幼虫(L5):約2㎝

三期幼虫を持った蚊によって吸血されると、犬の体内に三期幼虫が入り込みます。犬の体内に入り込んだ三期幼虫は、体のさまざまな部位を移動しながら脱皮をして五期幼虫にまで成長します。五期幼虫になると、一般的なフィラリア予防薬の効果が無くなってしまうため、五期幼虫になる前にフィラリアの薬を投薬することが必要になります。

三期幼虫から五期幼虫まで成長するのにかかる時間は約60日と言われています。つまり、フィラリアのお薬は最大60日間隔があいてしまっても効果があるということです。ただし、60日だと成長の速いフィラリアがすでにL5になってしまっている可能性があるため、2か月間が空くのは危険です。

フィラリアのお薬が1か月に1回になっているのは少し余裕を持たせて予防するためです。2か月間が空いてしまっては感染のリスクが出てしまいますが、毎月のお薬を数日遅れてしまったというくらいであれば問題はありませんのですぐに飲ませておきましょう。

成虫:雄17㎝・雌28㎝

L3が犬の体内に入ってから5~6カ月でフィラリアは成虫になると言われています。成虫になったフィラリアは右心室から肺動脈に寄生して生活するようになります。フィラリア成虫を殺す薬はありますが、フィラリアの成虫を殺してしまうと虫が血管に詰まってしまい、非常に危険です。

そのため、フィラリアがL5以降になってしまった場合にはフィラリアの成虫が寿命を迎えるまで待つしかありません。フィラリアの成虫の寿命は5~6年と言われていますので、その期間はずっと肺動脈や右心室に負担をかけた状態になります。その間に心不全を引き起こして亡くなってしまう子も少なくありません。

また、新しいフィラリアが感染すると、いつまでたってもフィラリア症が治らず、どんどん心臓に負担をかけますので、フィラリアにかかっていても、フィラリア予防は大切になります。また、最近ではボルバキアと呼ばれるフィラリアに寄生する細菌を殺すことで、フィラリア成虫の寿命を短くできるという治療法が提唱されています。フィラリア検査で陽性だと言われてしまった飼い主さんはこちらのページを参考にしてみてください。

フィラリアについて知ったうえでしっかり予防しよう

フィラリアがどのような虫なのかご理解いただけましたか?この記事で、フィラリアはなぜ治療ではなく予防が大切なのかがわかっていただけたのではないでしょうか。

次回は皆さん興味を持たれているフィラリアの予防薬のお話をさせていただきます。最近では嗜好性の高い飲み薬や、1年に1回で済む注射なども出てきています。それぞれのメリット・デメリットを知ったうえで、愛犬に最適な治療法を考えてみてくださいね!

 

 

 

 

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