膀胱結石続き
キャバリアのソラちゃん(仮名)の再診です。前回の記事はこちらです。
ソラちゃんは特に元気食欲も問題ないということでしたが、若干咳が増えてきていると飼い主様は心配されていました。
前回の診察から2週間。まずは身体検査を行います。特別変わりはなさそうですが、やはり心臓には雑音が混じっています。本日は膀胱結石の経過のチェックの予定でしたが、咳も増えてきていると言ことなので、膀胱と心臓をレントゲンでチェックしてみることにしました。その画像がこちらです。左が2週間前、右が今回のレントゲン写真です。
膀胱結石は2週間でサイズの変化はないものの、前回見えていた尖りのようなものが消えてきております。ソラちゃんの膀胱結石で最も気になっていたのがその尖りによる膀胱の刺激だったので、尖りが無くなるのは非常に喜ばしいことです。今までは尿の量を増やして結石の成分の濃度を薄くするための利尿剤を1日1回飲ませていたようですが、前回からその半量を1日2回に変更しました。そうすることで、1日を通して薄い尿になり、結石ができにくくなってくれた可能性があります。
次に心臓のレントゲンです。
このレントゲン写真を見てみると、横(ラテラル)の写真で心臓の頭側背部(写真左上部)が拡大し、気管を押し上げています(通常、気管はまっすぐに伸びていますが、ソラちゃんの場合は背側に押し上げられて曲がっています)。拡大した心臓が気管を刺激して、咳が出てしまっている可能性が高いと考えられます。
レントゲンでは体格に対する心臓の大きさVHSの測定も行います。それがこちらの写真です。
測定の結果ソラちゃんのVHSは11.0となり、基準値を上回る心臓の拡大が確認されました。VHSに関してはこちらの記事も参考にしてみてください
今回の再診では
1.膀胱結石についてはサイズは変わらないものの
- 大きくはなっていない
- 尖りが消えた
という点からもう少し治療継続の価値があると判断しました。
2.心臓に関しては
- 中等度の雑音がある
- 咳という臨床症状が出始めている
- レントゲンで気管の挙上を伴う明らかな心拡大がある
という点から、飼い主様と相談の上、心臓の薬を開始することにしました。
高齢の動物で、いくつか疾患を抱えている場合、どの病気をどのように治療していくのかというのは非常に悩ましい問題です。基本的には命に関わる病気や本人の体のつらさ(痛み・気持ち悪さ・だるさなど)がある病気を優先して治療することが多いです。一方で、病気はあるけれどすぐに命に関わらないものや本人に症状がないものに関しては、優先順位が下がり無理な治療をしないケースもあります。
ソラちゃんの治療が本当に本人にとってベストなのかを今の時点で確定できるわけではないですが、最新の情報と今までの経験上、ベストと考えられる治療を飼い主様と相談して行っていっております。同じようなお悩みを持つ方はまずは相談だけでもお越しくださいね。