半導体レーザーを使う手術のメリット
ここ最近、手術のご依頼を受けることが多くなり、手術のために以前デモ機を導入していた半導体レーザーを購入いたしました。レーザーという名前はよく聞くと思いますが、実際どのようななもので、どんなメリットがあるのか簡単にご説明させていただきます。
半導体レーザーってどんなもの?
レーザー(LASER)はもともと「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(輻射の誘導放出による光増幅)」の頭文字を取った言葉です。日本語だと全然理解できませんが、簡単に言えば光を増幅させる装置で作られた人工的な光のことをレーザーと呼びます。
レーザーは、レーザーを作り出す物質によってさまざまな種類があります。半導体レーザーは、半導体によって作り出されるレーザーのことを指します。レーザーポインターや光ディスクにも半導体レーザーは使われているようです。
血管シーリングができる半導体レーザー
では半導体レーザーをどのように手術に使うかを見ておきましょう。
血管シーリングとは
手術の時には、出血しないよう血管を処理する必要があります。通常は、血管の処理には手術用縫合糸による血管結紮(けっかんけっさつ)を行います。糸を使わず、熱や超音波を使って血管を閉鎖させる方法を「血管シーリング」と呼び、手術時に半導体レーザーを使うことで血管シーリングが可能になります。
血管シーリングのメリット
血管シーリングを行うのには以下のようなメリットがあります。
体内に糸を残さない
血管シーリングを行うことで、体内に糸を残さない手術が可能になります。
特に、ミニチュアダックスフントなどでは、縫合糸に対する免疫反応(縫合糸反応性肉芽腫や無菌性結節性脂肪織炎など)が問題になります。胃とは生体にとっては異物ですので、その異物を体内に残さない手術ができるのは術後のトラブル防止に役立ちます。
手術時間を短縮できる
糸を使った縫合と違い、半導体レーザーによる血管シーリングはピンセットのようなもので血管をはさんでレーザーを出力するだけで血管の処理を行うことができます。そのため、レーザーを使うことで縫合時間が少なくなることで手術時間の短縮が可能になります。
手術時間が短縮できれば、もちろん麻酔の時間を減らすこともできますので、体に負担の少ない手術が可能になります。特に乳腺腫瘍や脾臓摘出術など血管の処理がたくさん必要な手術の場合には、手術時間を大幅に短縮できるため血管シーリングができる半導体レーザーが活躍します。
血管シーリングのデメリット(限界)
メリットの大きい血管シーリングですが、血管シーリングにもデメリット(限界)があります。
巨大な血管には使えない
血管シーリングは、あまりに大きな血管をシーリングすることはできません。大型犬の卵巣動脈や精巣に出入りする動脈や静脈などは血管シーリングでは完全に閉鎖することができないため、縫合糸による結紮が必要になります。
縫合はできない
血管シーリングはあくまで血管を閉鎖させるためだけのものです。半導体レーザーが完全に糸の代わりになるわけではなく、皮膚や腹壁の閉鎖などのためには縫合糸を使う必要があります。ただし、そういった場所に使う縫合糸は抜糸ができたり、体内で溶けてしまう性質(吸収糸)があるなど、体に残らないケースが多いです。
費用が高くなることも
血管シーリングをするためには、シーリングをするための機械が必要になります。半導体レーザーであれば半導体レーザーの機械(当院ではCHEESEⅡ)が必要になります。そのため設備を入れるために費用が掛かり、それが手術の代金に上乗せになることもあります。
ただし当院では、手術時間の短縮やその他の用途での利用(疼痛緩和や創傷治癒促進など)ができることから、半導体レーザーを使用する手術にも追加料金はいただいておりません。半導体レーザーを使える手術であれば、追加費用なしで積極的に使っております。
疼痛緩和・創傷治癒促進などにも使える半導体レーザー
ご説明した通り、術中に使って糸の残らない手術を可能にできる半導体レーザーですが、術後に使うことで
- 疼痛緩和:術後の痛みを抑える
- 創傷治癒促進:傷の治りを早くする
- 消炎:炎症を抑えて腫れをひかせる
なども期待できます。
これは血管シーリングではなく、術後に傷口にレーザーを照射することで期待できる効果で、術後の開腹を早めてくれることが期待できます。手術に500円の追加料金で行うことができますので、ご希望の方はおっしゃってくださいね。
手術以外にもさまざまな使い方ができる
半導体レーザーが活躍するのは手術だけではありません。
椎間板ヘルニアや慢性関節炎などの疼痛緩和、けがをしてしまった時の創傷治癒促進、局所麻酔によるイボの切除、大きな腫瘍の蒸散など幅広い治療に使うことができます。
特に治りが悪い慢性の痛みや大きな傷、床ずれなど高齢の犬・猫でも使えるシチュエーションは多いので、気になることがある方はお気軽にお問い合わせくださいね。
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