往診に行ってきました
本日は、会議が入ったため午後を臨時休診にさせていただき、皆様にはご迷惑おかけいたしました。そんな中、携帯電話に動物病院からの転送電話が鳴りました。電話の内容は、飼っている猫ちゃんの調子が悪いとのこと。調子が悪くて動かすのもかわいそうだから往診に来てほしいとの依頼です。幸い動物病院の非常に近くの家だったため、会議が終わってすぐに準備をしてお家にお伺いしました。
猫 10歳以上 2~3日前から食べない
今回の患者さんは、猫ちゃんで10歳以上(詳しい年齢は不明)とのこと。2~3日前から食べが悪く、本日は嘔吐をしてフラフラになっているとのことです。猫ちゃんが病院嫌いであることと、キャリーケースが小さすぎて入らないために様子を見ていたけれど調子が悪くなる一方でご相談を受けました。
※病院嫌いだから行きたくないという飼い主さんも多いですが、当院ではキャリーケースの貸し出しもできますし、キャットフレンドリークリニックの認定もあるため、病院嫌いの猫ちゃんにも早めに来ていただけると幸いです。
飼い主さんの希望もあったため、会議終了後に準備をしてすぐにお家に駆け付けました。お家に入ると廊下でぐったりする猫ちゃん(みかんちゃん:仮名)を発見。調子が悪くなってからお風呂や廊下に行きたがり、そこでそのまま寝てしまうということでした。
身体検査の結果は?
往診には体温計や聴診器など持ち運べるものしか持って行けず、基本的に検査の機械は持って行けません。そのため、往診での診察は獣医師の五感を使った身体検査が重要になります。
まずお熱を測ると36.0℃。猫ちゃんの平熱は38~39℃ですので、低体温を起こしています。また、皮膚をつまんで戻りを見るテントテストでは、戻るまでに数秒かかり脱水していることがわかります。そのほか身体検査をしていくと、腹部触診で数㎝の巨大なしこりがお腹の中に触れました。
つまり、身体検査の異常は「低体温」「脱水」「腹腔内腫瘤」です。ここから考えられることはいくつもありますが、
- 腹部腫瘤による調子の悪化
- 腹部腫瘤はあるが、それとは関係なく脱水を起こす病気による調子の悪化
のどちらかである可能性が高いです。
1であれば肝臓や脾臓、腸などの腫瘍によって胃腸の通過障害などを起こして嘔吐し、脱水を起こしたことになります。2の場合は、糖尿病や腎不全など高齢の猫に多い脱水を起こす病気により調子を崩しているということになります。このどちらかに関しては身体検査ではわからず、血液検査や超音波検査、レントゲン検査などが必要になる可能性があります。
本日は対症療法を
本日は時間外での診察であり、私以外のスタッフも不在であったため、飼い主さんと相談の上対症療法を行うことにしました。脱水改善のための点滴と胃薬の注射で少しでも調子を改善させることが目的です。
ただし、これはあくまで一時的な処置にすぎません。原因を特定しないと根本的な治療ができないことをお話ししました。明日は当院へ連れてきていただけるとのことでしたので、血液検査やレントゲン、超音波検査などで体に何が起きていて、どのような治療の選択肢があるのかお話ししたいと思っております。
往診のメリット・デメリット
往診にはいい面も悪い面もあります。
往診のメリット
往診の最も大きなメリットは、動物の負担が少ないという点にあります。お家の中で治療などができるため、移動や来院のストレスが少なく行うことができます。特にワクチンやフィラリア検査など簡単な処置や検査などであれば動物病院でやっても往診でやっても変わりません。
往診のデメリット
一方で、往診にはいくつかのデメリットがあります。
できる検査が限られる
往診に持って行けるものは限られています。身体検査やフィラリア検査くらいはできますが、血液検査は院内に持って帰らないとできません。また、レントゲンや超音波検査は病院でないと実施できません。今回のみかんちゃんのように、往診では確定診断がつかず、対症療法のみしかできないケースもあります。
動物の性格によっては診療が困難
犬や猫の中には、動物病院では大人しいけれど家では気が強くなって起こったり暴れてしまうこともあります。診察台もないため動物をうまく抑えられず、診療や治療が困難になることもあります。
身体検査も完璧にはできない
動物病院の診察室は、診察しやすいようにライトがとても明るくなっています。細かな異常も家の中より見つけやすいです。また、診察台の上で触診や視診などを行うことで、無理な態勢を取らなくても身体検査が可能になり、より確実な身体検査ができます。往診での身体検査は、病院での身体検査に比べると若干精度が低くなってしまうことがあります。
往診費がかかる
往診には獣医師と看護師が行くため、通常の診察にプラスで往診費がかかります。当院での往診は、その距離によって1,000円~3,000円(10㎞以上はそれ以上)の往診費がかかります。
往診におすすめな診療
ワクチンやフィラリア検査など簡単な予防
健康な子でワクチンやフィラリア検査などのみしてほしい場合には、往診でも動物病院へ来てもらうのと特別大きく変わりません。ただし、身体検査をしっかりしてほしい場合や体重を測りたい場合には、受診していただくことをおすすめします。
腎不全の点滴
腎不全で定期的に点滴が必要な場合にも、往診は有効です。特に来院のストレスが大きい猫の場合には、往診での点滴を行うことでストレスの少ない治療を行うことができます。定期的な腎臓の数値のチェックも、往診で採血をしてその血液を動物病院へ持ち帰って行うことができます。
多頭飼いの場合
往診費は距離によって違いますが、診察の頭数とは関係ないので、多頭飼いの場合でも1頭の場合でも往診費は同じです。そのため、多頭飼いで動物病院へ連れて行くのが大変な場合にも、往診はおすすめです。
まずはお気軽にご相談を
往診は基本的には予約制になりますが、その日の予定によっては当日のお電話でもお伺いすることができることもあります。「こんなこと往診でお願いできるかな?」と考えられている場合には、まずはお電話でお問い合わせくださいね。