動物病院で使う薬と海外薬
動物病院にはさまざまなものが必要となりますが、毎日の動物の治療のために欠かせないのが薬です。飼い主さんが意外と知らない動物病院の薬事情について、今日はお話いたしましょう。
動物薬と人体薬
薬には、大きく分けて2種類の薬があります。
ペットのための動物薬
まずは動物薬。動物に使うために開発された薬で、農林水産省から認可の降りた薬です。動物薬の中にも、犬用、猫用、牛用、豚用など動物種毎に薬の適応が決まっています。動物病院で使う動物薬の大部分は「犬用」「猫用」「犬猫用」の薬ですが、時々効能外使用で「牛用」や「豚用」の薬を使うこともあります。
現在、当院の内服薬の多く、注射薬の約半数は動物薬です。しかし、動物薬のみでは動物病院で十分な治療を行うことはできません。
動物にも使用する人体薬
実は、ペットにも人用の人体薬を使うことも多いのです。当院で使う薬の3割程度は人体薬になっています。
基本的に人も犬も猫も、体のつくりや働きはほぼ同じで、共通して使える薬は多いです。しかし、市場の大きい人体薬に比べ動物薬の市場は非常に小さく、そのため動物薬は人体薬に比べものにならないほど種類が少ないのです。
そこで、動物にも使えるというデータのある人体薬を、動物病院で日常的に犬や猫に使っています。ただし、犬や猫に危険性のある人の食べ物があるように、一部の薬は人には安全でも犬や猫には危険な薬もあります。また、体の大きさがかなり違う人とペットでは薬の用量もかなり違い、お家でペットに人用の薬を飲ませることは絶対にしないでください。
よりよい治療のための海外薬
動物病院では人体薬と動物薬を使いますが、時に日本で買うことのできない海外薬を輸入することもあります。
以下のような薬は海外からの輸入に頼ることもあります。
- 日本で手に入れることのできない成分を含む薬
- 日本で手に入れることのできないサイズ(用量)の薬
- 日本で手に入れると非常に高額になが、海外では安価に手に入る薬
海外薬を使うことで、より良い治療ができるだけでなく、薬の価格を抑えることができ、飼い主さんの費用負担を抑えることもできます。
以上のように、動物の治療のためには、その病態に合わせて動物薬、人体薬、海外薬を使って行く必要があります。先ほども書きましたが、くれぐれも「ペットが風邪気味だから人の風邪薬を飲ませよう」とかってに与えないようにしてください。人の風邪薬を飲ませることで犬や猫がかなり危険な状態になってしまうこともありますので。