猫ちゃんのアレルギー検査

2月下旬に入り、すでに暖かくなってきましたね。春はもうすぐそこまで来ているようです。寒い冬から暖かい春になり、お花見などのお出かけにとても良いシーズンになりますが、花粉症の方にはつらいシーズンにもあります。

そんな季節ですが、猫ちゃんにも花粉症(花粉アレルギー)はあり、花粉症を含めた猫のアレルギーの検査ができるようになりました。今回は、そんな猫のアレルギー検査について、実際に検査をした猫ちゃんの例を挙げてお話いたします。

アレルギー検査ってなんだろう?

まず、皆さんが気になる「アレルギー検査とはどんなものなのか」についてお話いたします。

異物を攻撃するIgE

猫のアレルギー検査で測定するのはIgE抗体と呼ばれる物質です。

IgE抗体は、免疫反応を引き起こす免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質の一種です。IgE抗体は、体に異物が入ってくると作られる物質で、本来は細菌やウイルスなどから体を守るために働く物質です。インフルエンザワクチンや犬や猫の混合ワクチンなども、この抗体を作って防御力を高めるために打ちます。

IgEはアレルゲン特異的と言って、どの物質に攻撃をするのかが決まっている物質です。つまり、インフルエンザウイルスに対するIgE、花粉に対するIgE、ハウスダストに対するIgEはそれぞれ別の物質です。IgEはいわば敵それぞれに対する専用の武器のようなものなのです。

IgEが起こす炎症反応がアレルギーのもと

体に入ってきた異物を攻撃するIgEは、感染症を防ぐために必要となりますが、体に害のないものに対して攻撃をしてしまうとアレルギーを引き起こします。花粉症を例にとって考えて見ましょう。

まず、体が花粉を異物と認識すると、花粉に対するアレルゲン特異的IgEが作られます。そして、再度花粉が体に入ると、このIgEが花粉にくっつき、それが肥満細胞と呼ばれる免疫細胞に結合して肥満細胞が活性化します。肥満細胞からはヒスタミンなどの炎症メディエーターが放出され、花粉に対する炎症が起こります。これがアレルギーのメカニズムです。

IgEによる炎症は、細菌やウイルスなど体に有害な物質を排除するために必要な反応ですが、花粉やフードなど体に害のないものに対して起こるのがアレルギーです。アレルギーは日本語では過敏症、炎症を起こさなくてもいい物に対して過敏に炎症を起こすのがアレルギーなんですね。

アレルゲン特異的IgEの濃度を測るアレルギー検査

猫のアレルギー検査はこのIgEの濃度を測ります。

普段接する機会の多い花粉などの環境アレルゲン、豚肉や鶏肉などの食物アレルゲンに対するIgEの体内量を調べることで、体がどの物質にどの程度過敏に反応するのかを、血液を取って確認します。正常であれば、体に害のない環境アレルゲンや食物アレルゲンにはIgEは作られませんが、アレルギー体質の猫ちゃんの体の中には、さまざまな物質に対するIgEが多く作られます。

当院では「動物アレルギー検査株式会社」という検査センターに送ってIgEを検査してもらいます。こちらの会社は現在のところ動物のアレルギー検査で最も信頼性が高いと考えられており、猫ちゃんの場合は、1回の採血で、以下の表のとおり全40項目のアレルゲンを検査してくれます。

 

環境アレルゲン 食物アレルゲン
節足動物 ヤケヒョウダニ 肉系 鶏肉
コナヒョウダニ 卵白
アシブトコナヒョウダニ 卵黄
ノミ 七面鳥
アヒル
カビ アスペルギルス 牛肉
アルテリナリア 牛乳
クリプトスポリウム 羊肉
ペニシリウム 豚肉
キク科植物 ヨモギ 魚系 カツオ
オオブタクサ マグロ
アキノキリンソウ サケ
タンポポ タラ
フランスギク 植物系 小麦
樹木 ニホンスギ トウモロコシ
シラカンバ
ハンノキ 大豆
イネ科 カモガヤ ジャガイモ
ハルガヤ
オオアワガエリ
ホソムギ
ギョウギシバ

 

アレルギー検査の実際の手順

当院でのアレルギー検査は以下のような手順で行います。

アレルギー検査の必要性を相談

まずは、アレルギー検査の必要性について猫ちゃんの飼い主様とアレルギー検査の必要性について相談します。

検査の適応かどうか

まずは、本当にアレルギー検査が適応になるのか、その適応症例であるか否かをお話しします。

猫のアレルギーはいくつかの症状を起こしますが、以下のような症状がある場合にはアレルギーが関与している可能性があります。

  • 繰り返す皮膚病
  • 慢性的な下痢や嘔吐
  • 咳・呼吸が苦しいなどの呼吸器症状

アレルギー検査のメリット・デメリットのインフォームドコンセント

アレルギー検査には、検査をするメリットもありますが、検査ですべて解決するものではありません。アレルギー検査のメリットとデメリットに関して簡単にお話いたします。

検査のメリット
  • 現在症状を出している原因の物質がわかる可能性がある
  • 原因が分かればその対策をとることができる
  • 症状が出たら薬を使うという「対症療法」を繰り返さなくて済む可能性がある
検査のデメリット
  • 猫では、アレルギーに関わるもう一つの物質「リンパ球」に関する検査ができない(犬では検査が可能です)
  • 一般的なアレルギーの原因物質を40項目を調べることはできるが、すべてのアレルギー原因物質の原因を調べることはできない
  • あくまで検査であるため、食餌の変更や環境の改善などを家で行わなければ症状の改善にはつながらない
  • 費用が高額(当院では採血料や送料、手数料込みで1万5,000円となっております)

つまり、アレルギー検査はとても有用な検査ではありますが、100%アレルギーの原因がわかり、治療法が決まるという検査ではないということです。

採血

検査を行うと決まったら、採血をします。猫のアレルギー検査は、採血をして検査センターに送るだけですので、予約などがなくても検査は可能です(犬のアレルギー検査のうち、リンパ球反応検査に関しては、検査センターの受入日の兼ね合いもあり、要予約となっております)

アレルギー検査に必要な血液の量は1mlと、通常の血液検査とほぼ同じ量で検査が可能になります。アレルギー検査時に同時に、ご希望があれば血液検査による健康チェック(貧血・肝臓・腎臓などの検査)も3,000円で行うことができます。

採血した血液は遠心分離をして、IgEの入っている上清(血清)を検査センターに送ります。

1週間程度で検査結果を郵送

IgE検査は、検査センターに届いてから数日で結果が返ってきます。結果が返ってきたら、病院より飼い主さんにお電話で連絡した後、結果用紙を郵送いたします。

検査結果を見ながら、お電話もしくはご来院いただき、今後のご相談をさせていただきます。

 

アレルギー検査希望で来院の猫ちゃん

先日アレルギー検査をした猫ちゃんをご紹介いたします。

 

10歳のミックス猫ちゃん

今回アレルギー検査をしたのは10歳のミックスのオス猫ちゃん、たろうちゃん(仮名)です。

顎の下が荒れやすく、当院のホームページを見てアレルギー検査を希望されて、遠路はるばる一宮市からご来院いただきました。

身体検査・インフォームドコンセントをして検査

飼い主様のお話を伺い、身体検査をして、検査のメリットやデメリットなどのインフォームドコンセントをしました。ご説明を聞いていただき、飼い主様の希望があったため採血してアレルギー検査の検査センターに血液を郵送いたしました。便秘のご相談もあったので同時にレントゲン検査や薬の処方などを行い、診察は終了となりました。

検査結果は・・・

数日後、アレルギー検査株式会社から検査結果が返ってきました。以下がその検査結果です。

この検査結果を見ると、樹木の「ハンノキ」や「シラカンバ」に対するIgEが多くなっています。たろうちゃんは外に行かないということでしたが、飼い主さんの服や洗濯物などに付いた花粉がアレルギーを起こす可能性があるため注意が必要です。

また、陰性ではありますが、大豆や豚肉などに対するIgEが多めに出ているため、大豆や豚肉の入ったフードには注意が必要だと考えます。

そういったことをお電話でお伝えした上、結果を郵送させていただきました。現在経過観察中であり、生活環境を変えることでどの程度改善するのかは経過を見てみないとわかりませんが、気を付けるべきことがわかるということはとても良いことですね。

アレルギー検査受付中

犬や猫のアレルギーは非常に多く、皮膚の痒みや下痢などでお悩みの飼い主さんは多くいらっしゃいます。アレルギー検査がすべてではありませんが、原因が数値として出てくるアレルギー検査は根本的な解決ができる可能性のある検査として、おすすめしたい検査の一つです。

犬のリンパ球反応検査は要予約ですが、その他の検査はいつでもできます。命にかかわる病気ではない物の、一生付き合っていかなければならない病気であるアレルギー。一度しっかりその原因を調べてみませんか?

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