子犬を飼ったら知っておきたい皮膚病「膿痂疹」って?
犬にも猫にもたくさんの病気があり、年齢や犬種、猫種によって発生しやすい病気というものがあります。
今回は子犬の飼い主さんにぜひ知っておいて欲しい皮膚病「膿痂疹」についてです。あまり耳慣れない病気で、「何て読むの?」という飼い主さんも多いと思いますが(読みは「のうかしん」です)、子犬に特に多い病気で、2~6カ月齢の子犬では注意が必要な病気です。突然愛犬の皮膚に斑点ができて驚いて来院されることも多い膿痂疹について勉強してみましょう。
症例紹介
今回ご紹介するのは2か月のフレンチブルドッグ、ぶーちゃん(仮名)です。
お腹に赤いポチポチが
ぶーちゃんは2週間前にワクチンを接種しに来てもらっていました。その時は元気も食欲もあり、皮膚にも異常はないとても健康なわんちゃんでした。
ワクチンを打って2週間後、皮膚がおかしいという主訴で来院されました。その時の写真が以下のようなものです。
お家の子犬ちゃんにこんな皮膚病があったらびっくりしませんか?これが膿痂疹の初期症状なんです。
念のため、皮膚の検査をして、寄生虫などがいないことを確認して、「膿痂疹」として治療を開始しました。膿痂疹は皮膚の細菌感染であるため、抗生物質による治療がメインとなります。
2週間で完治
薬を飲んで10日後、再診の日です。皮膚を見てみると・・・
とっても良くなっています。この間飲んだお薬はセファレキシンという抗生物質だけです。ややお腹が緩くなったため1週間で投薬をやめたということですが、きれいに治っています。
膿痂疹ってどんな病気?
ここからは、膿痂疹について簡単にご説明いたします。
皮膚の細菌感染症「膿皮症」の1種
犬の皮膚病のうち、皮膚の細菌感染を膿皮症(のうひしょう)と言います。
膿皮症には、皮膚の浅い部分の感染症である浅在性膿皮症と、深い部分の感染症である深在性膿皮症の2種類があり、子犬のうちに発生する浅在性膿皮症が膿痂疹と呼ばれます。
膿痂疹の多くは、子犬のうちの免疫が弱いことが原因で起こります。免疫力が弱い子犬の皮膚で、ブドウ球菌などの一般的な細菌が増えてしまうのが膿痂疹です。
膿痂疹が発生しやすい犬種とは
膿痂疹はどの犬種にも起こりますが、一般的に皮膚が弱いと考えられる犬種に多く発生します。今回ご紹介したフレンチブルドッグ以外にもシーズーや柴犬、チワワなどに多い印象があります。ただし、他の犬種に少ないということもなく、生後2-4カ月程度の幼犬には非常に多い皮膚病です。
膿痂疹は人や他の犬に伝染する?
膿痂疹は、環境中や犬の皮膚に常在する菌が原因となるため、ヒトや他の犬に感染することはありません。膿痂疹は皮膚の感染症ではありますが、伝染病ではないんですね。
治療法は抗生物質
膿痂疹は細菌感染症ですので、基本的には抗生物質による治療がメインとなります。抗菌作用のある薬用シャンプーも効果的です。
通常の膿痂疹であれば、2~3週の投薬治療で完治します。投薬治療に反応がない場合には、ニキビダニや疥癬などの皮膚の寄生虫症や、免疫不全などの病気が隠れている可能性があります。
夏は皮膚病に注意
暖かく湿気の多い夏は、皮膚病が多発するシーズンです。膿痂疹のような皮膚の細菌感染だけでなく、真菌感染、アレルギー性皮膚炎なども非常に多くなり、夏にはすべての診察の中で皮膚病が最も多くなります。
皮膚病の症状は「痒み・赤み・かさぶた」などです。愛犬・愛猫の皮膚で気になることがあれば、早めにご相談くださいね!