ノミアレルギー性皮膚炎

暖かくなると来院件数が増えて来るのが皮膚病です。犬や猫は皮膚病が多く発生する動物であり、病気で来院するわんちゃん猫ちゃんの2割程度は、外耳炎を含めた皮膚病が理由となっています。

皮膚病は命にかかわりませんが、痒みによってQOL(生活の質)が落ちてしまったり、においやフケにより飼い主さんとわんちゃん猫ちゃんの関係が悪化してしまうこともあります。そんな皮膚病の中でも、この時期に多いのがノミアレルギー性皮膚炎です。「うちの子にノミなんていないから・・・」と思われている飼い主さんも多いようですが、ノミを見かけなくてもノミアレルギー性皮膚炎はよくある病気です。先日来院したポメラニアンちゃんを例にお話いたします。

ノミアレルギー性皮膚炎とは

ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液に対するアレルギーです。ノミが犬や猫の皮膚を刺して吸血したときに体内に入るノミの唾液に対するアレルギー反応が、ノミアレルギー性皮膚炎です。

ノミ1匹でも強い症状を起こすことがある

アレルギー反応は、少量のアレルゲン(アレルギーを起こす原因物質)があるだけでも強い症状を起こすことがあります。つまり、犬や猫の体質によってはノミが1匹いるだけでも、かなり強い痒みや脱毛などの症状を引き起こすことがあります。

ノミアレルギー性皮膚炎では下半身の痒みと脱毛が特徴的

ノミアレルギー性皮膚炎は、犬や猫の下半身に痒みや脱毛、赤みを引き起こすことが多いです。特に腰の後部~しっぽの付け根あたりにかゆみと脱毛がある場合には、ノミアレルギー性皮膚炎が強く疑われます。

ノミが見つからなくてもノミアレルギー性皮膚炎は否定できない

ノミは非常にすばしっこく、毛の中に隠れたり暗い場所に移動するため、ノミが見つからないと言ってノミアレルギー性皮膚炎は否定できません。ノミ予防をしていないわんちゃん猫ちゃんで皮膚の痒みや赤みがある場合には、ノミアレルギー性皮膚炎の可能性がありますので、以下の例のように愛犬・愛猫の皮膚を調べてみて下さい。

症例紹介:ノミアレルギー施肥皮膚炎のポメラニアンちゃん

では、実際に来院したポメラニアンちゃんの例をご紹介いたします。

2歳・ポメラニアン・ノミ予防未実施

今回ご紹介するのは、2歳のポメラニアンちゃんです。フィラリア予防はしていますが、去年も大丈夫だったため、ノミ・ダニ予防はしていませんでした。

お尻の辺りが赤くなっているのに気付いて当院を受診しました。

尻尾の付け根に脱毛と発赤

診察台で視診をしてみると、しっぽの付け根の部分に赤みと脱毛が見つかりました。

他の皮膚には異常がなく、気付いたら脱毛をしていたとのことです。痒みの症状は不明とのことでした。

ノミは見つからないが、くまなく皮膚を見てみると・・・

症状からはノミアレルギー性皮膚炎を強く疑います。そこでまずはノミを探してみましたが、見つかりません。

もう少し頑張って探してみると、背中の皮膚に以下のようなものが付いていました。

この黒いつぶつぶ、ノミの糞です。ノミの糞と砂などの汚れはぱっと見では区別はつきません。しかし、この黒いつぶつぶをつぶしてみると、赤い汁が出てきました。

ノミは血を吸っているため、つぶすと血の赤色が出てきます。ノミの糞かゴミかわからないときには、ティッシュを濡らしてつぶしてみましょう。赤くなればノミの糞、変化がなければ単なる汚れです。

今回は、上の写真のように赤色に変化したため、ノミの糞だと判断し、今回の症状はノミアレルギー性皮膚炎によるものであると診断しました。

ノミアレルギー性皮膚炎の治療はノミの駆除と抗炎症薬

ノミアレルギー性皮膚炎の治療は、原因となっているノミの駆除と、炎症を抑える薬で行います。

ノミの駆除(予防)

ノミアレルギー性皮膚炎の治療には、原因であるノミを駆除することが必要不可欠です。ノミの予防薬はノミを駆除することもできますので、ノミアレルギー性皮膚炎が疑われた場合には、ノミの予防薬を投与します。

当院で使用しているノミ予防薬は以下の通りです。

シンパリカ(犬)

粒が小さく飲みやすいチュアブルタイプのノミ・マダニ予防薬になります。

シャンプーのタイミングにも左右されないことと、ノミの駆除効果と駆除速度が非常に高いため、ノミアレルギー性皮膚炎を早く治してあげたい方におすすめです。

ブラベクト(犬)

最近発売された、1回の投薬で3カ月間効果の持続するノミ・マダニ予防薬です。

飲み忘れが怖い飼い主さんにはおすすめの予防薬となります。

マイフリーガード(犬・猫)

背中に垂らすスポットオン製剤です。飲み薬が苦手なわんちゃんでも簡単に使うことができます。

当院で最もよく出ているノミ・マダニ予防薬となります。ノミマダニ予防薬として有名なフロントラインと同じ成分のジェネリック薬になります。

レボリューション(犬)レボリューションプラス(猫)

スポットオンタイプのノミ予防薬です。

フィラリアや回虫など幅広い寄生虫に効くオールインワンタイプの薬となります。

犬のレボリューションにはマダニ予防効果はありませんが、猫のレボリューションプラスにはマダニの予防効果もあります。

ブロードライン(猫)

猫用のスポットオンタイプのノミマダニ予防薬です。

それ以外にもフィラリアや回虫、瓜実条虫など幅広い寄生虫に効果があるため、外に行く猫ちゃんにはぜひ使ってほしい予防薬です。

炎症を抑えるお薬

ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミを駆除するだけではすぐには収まりません。

原因物質であるノミを駆除しても体の中のアレルギー反応がしばらく続くため、それを抑えるためのお薬を使ってあげることで、痒みが収まります。

抗アレルギー薬にはいくつかの種類がありますが、当院では最も効果が早く確実に出るステロイド剤(プレドニゾロン)を使うことが多いです。ステロイド剤には副作用が多いというイメージがありますが、ノミアレルギー性皮膚炎は数日間の投与でほとんど治まりますので、副作用の心配はほとんどありません。

ノミ・マダニ予防はお忘れなく!

ノミやマダニは、お散歩コースに草むらがあったり、野良猫や野生動物がお庭に入ってくるような環境では、感染のリスクが高くなります。また、室内飼いのわんちゃん猫ちゃんでは感染リスクは低くはなりますが、飼い主さんの服や靴に付いたノミなどが感染してしまうこともあります。

ノミはノミアレルギー性皮膚炎や瓜実条虫など、マダニはSFTSやバベシア、ヘモプラズマなどの病気を媒介します。しっかり予防薬を使用してれば予防できる病気ですので、特に春~秋にかけては確実に予防してあげてくださいね!