放置するとこんなことに・・・犬の膀胱結石と膀胱結石摘出術

冬になると、泌尿器系の病気が多くなります。犬や猫も寒いと飲水量が減り、その結果尿量が減ってくることがその理由となります。

冬に増える泌尿器系の病気には、膀胱炎や膀胱結石などがあります。単純な膀胱炎であれば数日~数週間の飲み薬でよくなるケースが多いですが、膀胱結石があると頻尿や血尿がずっと続いてしまいます。

今回は、膀胱結石があると他院で診断され、フードを変えて様子を見ていたもののかなり巨大になってしまった柴犬ちゃんのお話です。

12歳 ♀(避妊済) 柴犬 うめちゃん(仮名)

今回ご紹介するのは12歳の柴犬の女の子うめちゃん(仮名)です。とてもなつこいワンちゃんで、初めてとなる当院の診察室内でもしっぽを振りながら愛想を振りまいてくれていました。

主訴 頻尿と目の周りの脱毛

うめちゃんが来た理由は、非常に頻繁な尿意と目の周りの脱毛でした。

その際、診察室で血尿をしたため、飼い主さんに聞いてみたところ数年前に他院で膀胱結石を指摘され、膀胱結石用のフードに変えて様子を見ていたそうです。

院内でも尿意を我慢できない

診察前に飼い主さんにお話を聞いている間にも、うめちゃんはおしっこを我慢できず診察室の床で少量の薄い血尿をしてしまいました。うめちゃんにはかなり強い頻尿の症状があるようです。

目の周りのかゆみについては症状や経過からアレルギーの可能性が高いと考え、薬による治療を行いながら経過を見ていくことになりました。

一方、これだけ強い頻尿の症状があるため、膀胱炎や膀胱結石の治療も必要と考え、検査を進めることにしました。

レントゲン検査で巨大な結石を確認

膀胱結石の確認のための検査には、レントゲン検査と超音波検査がありますが、ちょっと咳が出るというお話もあったため、全身状態を把握するためにレントゲン検査を実施しました。

以下が初診時のレントゲン写真となります。

レントゲン写真の右のほうにある三角と四角の白い陰影わかりますか?これが膀胱結石です。太ももの骨(大腿骨)の太さよりも大きな膀胱結石が2個、膀胱の中に存在しています。

体を動かすたびにこれだけ大きな膀胱結石が動きますので、痛みや違和感は相当なものだと考えられます。

膀胱結石の治療法

 

ここで、膀胱結石の治療法について簡単にお話いたします。膀胱結石が見つかった場合の治療法は大きく以下の2つに分かれます。

内科治療(投薬及び食餌療法)

膀胱結石のうち、ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)は、フードや薬によって溶かすことは可能です。ただし、ストルバイト以外の結石や、あまりに大きな結石は内科治療で溶かすのは困難となります。

外科治療

膀胱結石を確実に治療するのが、外科治療(手術による摘出)になります。内科治療で溶解させられないようなシュウ酸カルシウム結石や非常に巨大な結石では、外科治療が第一選択となります。

一方で、膀胱結石の手術は全身麻酔が必要となるため、リスクのある治療法になります。犬や猫の全身状態を見ながらその是非を考えていかないといけません。

うめちゃんの手術

うめちゃんは飼い主さんと相談の上、手術をすることに決めました。その経緯及び経過は以下の通りです。

全身麻酔のリスクを評価するための術前検査

全身麻酔をかける場合、そのリスクがどれくらいあるのかを評価するための術前検査が大切になってきます。

身体検査

一番基本的で費用もかかりませんが、最も大切な術前検査は身体検査だと考えています。

身体検査には以下のような項目があります。

  • 視診
  • 触診
  • 聴診
  • その他(検温など)

心臓病や貧血などは身体検査だけでもわかることはあります。身体検査だけで病気の原因がわかることは多くはありませんが、身体検査でわかる動物の状態は非常に多いです。

うめちゃんは若干痩せている以外には大きな身体検査場の異常は認められませんでした。

血液検査

血液検査は、血液の成分をチェックすることで内臓に異常がないかどうかを見つけるための検査です。

当院では、若い健康な動物の場合には、身体検査と最小限の血液検査のみを術前検査とする(身体検査で異常がない場合)ことは多いです。

うめちゃんの血液検査は甲状腺ホルモンが若干低い以外には大きな異常は認められませんでした。

レントゲン検査

麻酔をかける際には、循環器・呼吸器の状態を把握するための胸部レントゲン検査も重要になってきます。特に高齢動物では、心臓病や呼吸器疾患が多く発生するため、当院では高齢動物の術前検査として胸部レントゲン検査は必須とさせていただいております。

うめちゃんは胸部及び腹部レントゲン検査で膀胱結石以外の大きな異常は認められませんでした。

術前に抗生物質を処方して手術に備える

身体検査・血液検査・レントゲン検査で麻酔のリスクを高くするような大きな異常が認められなかったため、飼い主さんと相談の上、手術を行うこととなりました。

膀胱結石はミネラルと菌の塊であり、大きな膀胱結石を持っているうめちゃんは慢性的な膀胱炎を持っている可能性が高いです。術後の腹膜炎の予防のためにも、抗生物質を処方し、手術まで飲んでもらうことにしました。

手術

手術の当日朝、うめちゃんをお預かりして静脈点滴を流し、お昼からの手術に備えました。手術中だけでなく、手術前後の点滴は、麻酔の事故や術後の合併症を減らすためにも大切です。

手術を待つ間にも、薄い血交じりのおしっこを何度もするうめちゃん。強い膀胱炎を起こしているようです。

手術は、通常通り、

  • 全身麻酔
  • モニター
  • 術やの毛刈り・消毒
  • 手術

の順で行い、特に問題なく終了しました。かなり長期的な慢性膀胱炎があったようで、膀胱壁画重度の肥厚をしていました以外には手術・麻酔に問題なく、麻酔の覚めも非常に良かったです。

手術で取り出した膀胱結石がこちらです。

レントゲンに写った通り、大きな膀胱結石を2個取り出しました。

術後のレントゲン写真は以下の通りです。

術前に写っていた膀胱結石の白い影がなくなっています。

術後経過

うめちゃんは術後の調子もよく、手術翌日には食欲元気もほぼ元通りになりました。

尿の調子も非常によく、翌日には見た目の血尿が止まり、術前よりもたくさんの尿をためて出せるようになりました。

術後2泊で退院となり、1週間後に抜糸をして治療終了としました。抜糸の時には「手術前より元気だ」と飼い主さんが喜んでくれていました。

まとめ

犬や猫には膀胱結石が非常に多く発生します。膀胱結石は頻尿や血尿などで気づかれるケースもありますが、知らない間にかなり大きくなってしまうこともあります。

膀胱結石は、結石の種類によっては小さいうちなら食事やフードで治療することも可能です。大きくなってしまうと、今回ご紹介したうめちゃんのように慢性的な痛みや頻尿によって飼い主さんがわからないような苦痛とともに数か月~数年もの間、生活しなければならないこともあります。

膀胱結石の予防や早期発見のために、日ごろから愛犬・愛猫の尿の状態をチェックするとともに、定期的に尿検査や超音波検査などを行うことも大切です。

愛犬・愛猫の尿結石が心配な方はぜひ当院までご相談くださいね。総合的な健康チェックができるわんわんドック・にゃんにゃんドックなども毛つけておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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