犬のフィラリア症③ フィラリア症の診断・検査

犬のフィラリア症の診断は非常に進んでおり、フィラリアに感染しているかどうかは、血液検査で簡単に調べることができます。ただし、フィラリア症の診断は、フィラリアにかかっているかどうかだけでなく、感染している場合には心臓や全身の状態を把握するためにいくつかの検査が必要になることもあります。今回は、フィラリア症の診断のために行う検査とその意味をお話いたします。

フィラリア 検査

フィラリア症の感染の有無の検査

フィラリア症の感染の有無に関しては、血液検査で簡単に調べることができます。血液検査には大きく2つの方法があり、どちらの方法をとるかによって診断精度が大きく異なります。

フィラリア抗原検査

フィラリア抗原検査は、血液の中に存在するフィラリアの体から出て来る成分(抗原)を検出する検査です。フィラリア抗原検査キットに犬の血液を数滴たらして、その中にフィラリア抗原が含まれていないかどうかを調べる検査です。非常に精度が高く、ほぼ100%のフィラリア症を診断することができます。そのため、アイビーペットクリニックではフィラリア抗原検査を行い、確実にフィラリア感染を診断できるようにしています。

フィラリア抗原検査はフィラリアの成虫を対象にした検査になります。そのため、数か月以内に感染したフィラリアに関しては検査結果が偽陰性(フィラリアが感染していても陰性になる)となる可能性があります。フィラリア予防薬を1月飲ませ忘れたという場合には、すぐに検査してもわからないので、慌てず次の年にしっかり検査をしてもらうようにしましょう。

ミクロフィラリア検査(顕微鏡検査)

血液の中にフィラリアの子虫(ミクロフィラリア)がいないかどうかを調べる検査です。血液一滴をスライドグラスに垂らし、それを顕微鏡で観察してミクロフィラリアがいないかどうかを調べる方法です。非常に簡単で費用も安い検査にはなりますが、ミクロフィラリアが見られない「オカルト感染」が数%~数10%あるといわれており、検査の精度は高くありません。

※オカルト感染

フィラリア感染をしているのにもかかわらず、ミクロフィラリアが見つからない状態を指す。原因としては、以下のようなことが考えられます。

  • 単性感染:フィラリアのオスもしくはメスのみが感染していて子供が産まれない
  • 日内変動:時間帯によってミクロフィラリアが末梢血液に現れにくい時間がある
  • 成熟前のフィラリア症:犬に感染してからフィラリアが子供を産眼るようになるため5カ月程度かかる。その間はミクロフィラリアは検出できない。
  • フィラリア予防薬の投与後:フィラリア予防薬はミクロフィラリアを殺すため、予防薬投与後はミクロフィラリアを検出することができない。

オカルト感染ではフィラリア成虫がいるため、体に害を与えてしまいます。また、日内変動でたまたまミクロフィラリアが検出されない場合、フィラリア予防薬を飲ませるとミクロフィラリアの死滅に伴うショック症状が出てしまうことがあります。確実に検査をするためにはフィラリア抗原検査をおすすめいたします。

心臓の状態を調べる検査

フィラリアの感染は検査キットによって簡単に調べることができますが、フィラリアに感染してしまっている場合には、心臓の状態によって治療法が異なってきます。心臓の状態を調べるためには以下のような方法があります。

身体検査

慢性フィラリア症の末期では、うっ血性心不全によるむくみ(浮腫)や腹水が出てきます。これらの症状がフィラリア感染に伴って出てきている場合にはうっ血性心不全を薬で治療する必要がありますが、腹水などを完全になくすことは難しいです。

また、フィラリア症に感染していて急激に状態が悪化しているときに、頸動脈の怒張や歯茎の蒼白化などがある場合には、急性フィラリア症(ベナケバシンドローム)を強く疑う所見になります。

聴診

心臓の状態を簡単に迅速に調べるのが聴診です。前回の記事でもご説明しましたが、フィラリアの感染に伴い右心房と右心室の間にある三尖弁にダメージがあると、三尖弁を通る血流がおかしくなります。その時には心雑音が聞こえるようになり、聴診で異常が出てきます。聴診で異常があると少なくとも心臓はある程度強いダメージを受けており、薬で心臓の不h痰を減らすような治療が必要になることが多いです。

レントゲン検査

レントゲン検査は心臓の輪郭(大きさや形)の異常を客観的に評価するために必要な検査です。慢性フィラリア症では、フィラリア感染に特徴的な「逆D型」の心臓がレントゲン所見として出てきます。逆D型の心臓は、肺動脈や右心房が拡大することで心臓の形が変わってきてしまったサインであり、うっ血性心不全がいつ起きても不思議ではない状態であることを意味します。

超音波検査(心エコー)

心臓の状態を最もよく反映する検査が超音波検査です。犬を横向きに寝かせてしばらくじっとさせておく必要があるため、暴れて抵抗する犬の場合は検査が難しくなりますが、心臓の状態を的確につかむためには超音波検査が最も有効です。

超音波検査では

  • 肺動脈・右心房・右心室の拡大の程度
  • 右心房内や三尖弁に絡まったフィラリアの確認
  • 三尖弁逆流の程度
  • その他心臓の動きの異常

などがわかります。

フィラリア症の症状が出る前に治療を

フィラリア症は予防することが最も大切ですが、万が一かかってしまった場合には、症状が出る前に治療することが重要です。フィラリア検査が陽性になってしまっていても、心臓に異常がない状態でそれ以上のフィラリア感染を起こさないようにしておけば、心臓への影響をほとんど与えないようにできるケースもあります。

もし、フィラリア予防が数か月・数年抜けてしまった場合には、まずは早めにフィラリアの検査を受けておきましょう。もしフィラリアにかかってしまっている場合には心臓の検査をしっかりしてもらい、心臓の状態に合った治療法を、運よくフィラリアにかかっていない場合にはすぐに予防を始めることが大切ですよ!

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