地震・大雨・洪水・土砂崩れなど、自然災害は忘れたころにやってきます。自然災害によって急に避難をしなければならなくなることもあり、特にペットを飼っている場合には、避難に戸惑うことも多くなります。
そんな急な事態に対応できるよう、ペットとの同行避難の考え方と準備について知識をつけ、今できる準備をしておきましょう。
同行避難の考え方
同行避難の考え方については、環境省が出している「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を参考にしてみてください。以下のページからダウンロードすることができますので、プリントアウトして家族で一緒に読んでおくことをおすすめします。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/ippan.pdf
このガイドラインでは「災害時の同行避難を推進することは、動物愛護の観点のみならず、放浪動物による人への危害防止や生活環境保全の観点からも、必要な措置である」と書かれており、同行避難は飼い主の権利というより義務の一つと考えていただいた方がいいでしょう。
同行避難は必要な行為ではありますが、周りの人に迷惑が掛からないようにすることは大切です。普段から避難したときのことを考え、しつけや準備などをしておきましょう。
同行避難の準備
では、具体的に必要な準備についてお話しさせていただきます。
避難セット
まず最も大切なのが、愛犬・愛猫が生活するための避難セットです。災害時には気が動転して必要なものを考える余裕はありませんので、セットにしてどこかわかりやすい場所に置いて置き、いざ非難をしなければならないときにすぐに持ち出せるようにしておきましょう。セットの中身は以下の通りです。
フード
普段食べているフード、できれば1~2週間分は常に持ち出せる用準備しておくといいでしょう。ドッグフードやキャットフードは未開封であれば1年以上消費期限があるものもあります。少し小さめのフードを緊急用に備蓄して期限毎に買い替えるようにしておいてください。
お皿
フード用とお水用のお皿を1つずつ用意しておきましょう。普段家で使っているものを持ち出すのも1つですが、緊急時だと忘れてしまうこともあるので、100円均一などで予備用のステンレスのお皿を飼っておいておくことをおすすめします。
トイレグッズ
ペットシーツや便を入れる小さな袋、トイレ砂(猫)なども準備しておきましょう。
連絡先のかいた首輪・リード
避難所では、犬や猫がパニックで逃げ出してしまうこともあります。その時のために、飼い主様の名前・電話番号・動物の名前を書いた首輪(ハーネス)を必ず装着しておきましょう。できれば自分が被災して連絡が取れないときのために、知り合いや動物病院の連絡先も書いておくことをおすすめします。
また、犬だけではなく、猫でもリードがあると役に立ちますので、リードも1つ準備しておくといいですね。
ウェットティッシュ・タオル・ティッシュ・水のいらないシャンプー
体が汚れてしまった時に使えるようなタオルやティッシュなども準備しておきましょう。特に避難所ではペットのニオイによる苦情が出たりすることがありますので、消臭作用のある水のいらないシャンプーやスプレーなどもあるといいです。
キャリーケース
小型犬や猫であれば、以上のものをキャリーケースに入れて準備しておきましょう。余裕があれば、ある程度中で動けるよう大きめのキャリーケースを準備しておくといいですが、自分が持って避難できるくらいの大きさにしておいてください。
ペットの写真
ペットが迷子になってしまった時、ペットの写真があると目撃者探しにとても役立ちます。携帯電話に撮っておいてもいいですが、電源の確保が難しくなることもあるので、避難セットの中に1枚入れておくことをおすすめします。
避難時に忘れないようにするもの
古くなってしまうと良くない薬や、日頃必要な証明書や検査結果は避難セットに入れておくのが難しい場合もあります。以下のものは避難時に避難セットと一緒に忘れないように持ち出しましょう。
ペットの薬
愛犬・愛猫が薬を飲んでいる場合、その薬を忘れずに持って行くようにしましょう。災害時には動物病院と連絡が取れなくなることもあるので、必ず飲んでいる薬の種類や量は把握するようにし、慢性疾患で長期的に薬を飲んでいる場合には、1週間程度余裕を持って薬を出しておいてもらっておくと安心です。
ワクチンなどの証明書
同行避難時に、トラブルになった時に混合ワクチンや狂犬病予防接種などの証明書が必要になる可能性もあります。常に避難セットに入れておいてもいいですが、どこかに保管している場合には避難時に一緒に持って行くようにしましょう。
ペットの検査結果
かかりつけの動物病院が被災してしまった時のことも考え、今までの検査結果なども一緒に持って行くようにしましょう。
事前にやっておきたいこと
避難時に必要なのは持ち物だけではありません。以下に書くことを事前にやっておくと、ペットとの同行避難時に非常に役立ちます。今のうちにできることをしておきましょう。
しつけ・社会化
同行避難する場合、ペットのしつけや社会化ができているかどうかというのは非常に大切です。
しつけや社会化ができていないと、他の人や動物に対して吠えたり攻撃してしまうことがありますし、緊張で体調を崩してしまうことがあります。小さいころからしつけや社会化をしっかりしておくことが、いざという時のためにも大切です。
ペットを預かってもらえる知人の確保
ペットの同行避難は、周りに気を使わなければならないうえ、慣れない環境や狭いキャリーでの生活など、ペットのストレスも強くなります。可能であれば、いざという時にペットを預かってもらえる知人を確保しておくといいでしょう。知人も同時に被災することも多いので、近所ではなく県外など自分の住んでいる地域外の知人を確保するようにして下さい。
避難所や避難経路の確認
ペットとのスムーズな同行避難のために、避難所の場所や避難経路についても確認しておきましょう。岐阜市の避難所に関しては以下の市役所のウェブサイトを参考にしてください。
http://www.city.gifu.lg.jp/21100.htm
各務原市や岐南町など他の市町村に関しても、お住まいの地域の役所のホームページを参考に、災害時にどこにどう移動するのかを考えておいてください。
マイクロチップの装着
マイクロチップは背中に埋め込む犬や猫の個人情報を書き込んだチップになります。このチップがあると、万が一迷子になっても動物病院などに置いてあるマイクロチップリーダーで情報を読み込むことができますので、マイクロチップに登録した連絡先に連絡してもらうことができます。
マイクロチップは、取扱いのある動物病院で入れることができます。通常、避妊手術や去勢手術など麻酔をかけたときに同時に入れることが多いですが、無麻酔でも挿入は可能です。当院でも取り扱っておりますので、ご希望の方はまずは一度お電話でご相談くださいね。
避妊・去勢
東日本大震災の際に、地震や津波で放置されたり逃げ出してしまった未避妊の犬や猫が繁殖してしまって問題になりました。無秩序な繁殖は、不幸な動物を増やすだけでなく、ペット同士の伝染病や危険な出産のリスクを増やし、愛犬・愛猫の健康を損なう危険性もあります。災害時にこういったこともありますので、もちろん病気の予防の観点からも避妊・去勢をしておくことも大切です。
ペットと家族のためにいざという時のために備えよう
ここ最近、地震や大雨などの自然災害が多く発生し、被災によって避難を余儀なくされることも増えています。幸い、当院のある岐阜市周辺では、ここ最近大きな自然災害は発生していませんが、自然災害はいつどこで発生するかわかりません。
もちろん、ご自身が安全に避難できる準備をしておくことは大切ですが、ペットを飼っている場合にはよりしっかり準備しておくことが必要になります。ペットと家族のために、いざという時に備えておくようにしてくださいね。