身体検査の内容とその意義① 身体検査はなぜ行う?身体検査の強みと弱み
動物病院で行う検査にはさまざまなものがありますが、その中でも身体検査は非常に重要なものです。動物病院では体調が悪く病気が疑われる子だけでなく、ワクチンやフィラリア検査など健康と思われる子が来院するケースも多く、そんな子たちの身体検査でも病気や異常が見つかることも少なくありません。このシリーズでは、動物病院(特に当院)で行う身体検査についてお話いたします。
身体検査とは?
身体検査は、特別な機械を使うことなく診察台の上や待合などで行うことのできる体のチェックです。一般的に動物病院で行う身体検査と呼ばれるものには以下のような項目があります。
- 体重測定
- 検温(体温測定)
- 視診
- 触診
- 聴診
身体検査のメリット(強み)
身体検査のメリットは以下のような点にあります。
特別な器具がいらない=費用がほとんどかからない
身体検査は特別な器具がなくてもできる検査です。体重計や体温計、聴診器などは必要になりますが、これらの器具を使うことで費用が発生することは非常に少ないです。当院でも診察料(再診料)の中に身体検査代も含んでおり、身体検査をしたから料金がかかるということはありません。
その場ですぐにでき、ストレスも少ない
一般的な身体検査は、診察台の上で2~3分もあればぱっと行うことができます。もともと痛みのある場所を触るなど特別な事情がない限りは痛みもなく、暴れなければ強く抑えることもなく行うことができるため、検査にかかるストレスは非常に少ないです。
体全体を見ることができる
身体検査は、数ある検査の中でも、体全体を見るためには最も有用性の高い検査と言っても過言ではありません。例えば血液検査は内臓の状態を把握するためには非常に優れた検査ですが、皮膚や神経の異常はほとんどわかりません。超音波検査も内臓の状態をよく観察することができますが、貧血や発熱の有無、体表の異常などを調べることはできません。
一方で、身体検査はそれだけで病気を診断できることがあるだけでなく、幅広い異常を見つけることができるため、次にどのような検査が必要かという方針を立てることができます。
身体検査の限界(弱み)
身体検査にさまざまなメリットがある一方、身体検査には限界があります。
客観的評価が難しい
身体検査は、獣医師の五感を使って行う検査であり、数値で表すことが難しい検査です。また、飼い主様にも数値や画像としてお見せすることができない検査が多くなります。
獣医師による判断の違いが大きい
何度も言いますが、身体検査は獣医師の五感を使う検査です。血液検査のように正常値と異常値がはっきりしている場合には、どの獣医師が評価してもそれほど変わりません。
しかし、身体検査に関しては、異常なのか正常なのかは、正常な状態の動物を診察して経験を積まないとわからないことも多いです。身体検査は獣医師の技量によって大きく差が出る検査です。
個体差が大きい
身体検査では、時に異常だと感じたものが正常であるということもあります。例えば、舌の色が白っぽい場合、貧血や低血圧を疑いますが、正常でも普段から白っぽい子もいます。また、膵炎や胃腸内異物などによる腹痛があると腹部に緊張が見られますが、怖がりの動物では正常でも腹部の緊張が高くなります。
身体検査での異常所見は時に正常でも見られることがあり、身体検査で診られた異常は、他の検査で確認する必要があることも多いです。
身体検査をしっかり受けよう
狂犬病予防接種や混合ワクチン、フィラリア検査など、健康なわんちゃん・猫ちゃんが動物病院に来院する機会は少なくありません。ワクチンを打つだけであれば1分もかかりませんが、打つ前に身体検査をすることで、体の異常を早期に発見することがあります。
当院では、ワクチンやフィラリア検査の前に必ず身体検査をするようにしておりますので、何か気にることがある場合にはその時に一緒に聞いてみてくださいね。